新型コロナ沖縄の今

「命の選別」を強いられる事態も 医療現場が恐れるコロナ重症者の増加

2020年5月4日 04:50

 もしも重症が増え続けたら-。県内で新型コロナウイルス患者を治療する医師らが苦悩を深めている。集中治療室(ICU)、人工肺などの高度医療設備、人手は限界が近づいており、今後も患者が増えれば、病状によって治療の優先順位を決める「命の選別」を迫られかねない。(社会部・下地由実子)

(資料写真)病院

久木田一朗医師

ECMOの仕組み

(資料写真)病院 久木田一朗医師 ECMOの仕組み

■空かない病床

 「どの患者を選ぶか。今は何とも言えない」。ある医師は言う。県内の流行のピーク時には1日当たり重症73人が出るという国の予測もある。医師らは危機感を募らせ、改めて予防徹底を呼び掛ける。

 県内では1日現在、新型コロナ感染の入院患者80人のうち、重症は12.5%に当たる10人。感染が急増した4月中旬の6、7人から高止まりしている。重症者の回復には長期間を要するため、なかなか病床が空かない。重症者を手当てできる県内のICUは163床。他の病気やけがの患者もおり既に余裕はない。

 新規の感染が減っている今も気は抜けない。実際に重症者を診る指定医療機関では、既に新型コロナ以外の患者の不急の手術を避け、転院を進めている。県の糸数公保健衛生統括監は「もっと多くの重症が一斉に出た場合、回せる病院は限られる。さらに調整が難しくなる」と課題を認める。

■最後の切り札

 新型コロナは重症化すると肺炎を起こしやすい。特効薬のない中で治療の「最後の切り札」と期待されるのが膜型人工肺「ECMO(エクモ)」だ。体の外で血液に酸素を取り込み、体内に戻す生命維持装置。傷んだ肺を休め、回復する時間を稼ぐ。

 だがエクモの数は限られる。県内では本島中南部の4病院に35台。治療中の不具合に備え、患者に充てるには予備機と2台1セットでしか動かせない。体への負担が大きいため、高齢者には使いづらい面もある。

 扱いに慣れた医師や看護師も多くはない。エクモ治療を進めてきた琉球大学病院救急部部長の久木田一朗医師(64)は「呼吸不全が進んだ段階の治療で頻繁にするものではない」と話す。

■治療順位付け

 医療資源が限られる中で爆発的に重症患者が増えた場合、東日本大震災などの災害時と同じように、治療の優先順位を付ける「トリアージ」を迫られる。

 望ましい医療の在り方を考える同病院臨床倫理士の金城隆展さん(48)は「医療従事者に対して『命の選別』を強いる緊急事態になり得る」と危機感を募らせる。その上で「迫り来る医療崩壊を防ぐために、新型コロナの正しい知識を得て、しっかりした動機付けの下、予防に努めてほしい」と呼び掛けた。

<ECMO(エクモ)とは>

 呼吸不全が進んだ肺の代わりに、体の外で血液に酸素を取り込んで体内に戻す生命維持装置。傷んだ肺を休めておくことができ、回復までの時間を稼ぐ。酸素吸入や人工呼吸器では救命が難しくなった際に用いる。長ければ1カ月装着する場合もある。日本集中治療医学会によると、新型コロナのためにエクモ治療を終えた患者のうち7割が生存している。65~70歳以上には治る経過が良くないとして一般的に使わない。

 

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