社説

社説[コロナと差別]想像力を働かせ克服を

2020年5月4日 10:17

 「夫も医療従事者で早朝出勤し夜遅く帰宅します。仕事で落ち込む姿を見せたことはなかったのですが、この頃は眉間にしわを寄せ考え込んでばかりです」。南風原町の女性が本紙3日付のオピニオン面に投稿している。「医療従事者への偏見や差別に心が痛みます」ともつづっている。

 新型コロナウイルスが終息の兆しが見えず、差別や偏見が感染者や家族にも広がっている。憂慮すべき事態だ。

 県内でも看護師2人の感染が明らかになった後、同じ病院に勤務する看護師らスタッフの子どもが保育所や学童保育への登園を断られ、家族がデイケア通所の利用ができなくなったことがあった。

 子どもの預け先がないため5、6人が病院へ出勤できなかったという。病院機能が低下しかねない。

 医療従事者は、疲労が蓄積している。自らも感染のリスクにさらされながら総力で踏ん張っているのが現状だ。県民の命と健康を守るための高い使命感からである。このような過酷な現場で奮闘していることに差別と偏見が加われば、離職が助長され、医療崩壊につながりかねない。

 思い出されるのはスペインを家族旅行し感染した10代女性を巡り「名前や学校を教えろ」と脅迫めいた電話が県教育庁に複数寄せられたことだ。SNSでは成田空港での検査結果を待たずに飛行機で帰沖したことについてもバッシングが起きた。

 感染者を「異物」として排除するのは、社会を分断するものだ。新型コロナは誰もが感染する恐れがあることを認識する想像力を持ちたい。

■    ■

 差別や偏見は医療従事者にとどまらない。

 感染地域を往来する愛媛県のトラック運転手2世帯の子ども3人が小学校から自宅待機を求められた。3人は体調に問題がなかったものの、始業式と入学式を欠席した。

 感染者数が少ない徳島県では県外ナンバーの車に「暴言やあおり運転、投石、傷つける」といった差別的行為が起きている。田野大輔甲南大教授は「自粛」に従わない人を責めるような風潮について「みんなで危機を乗り切ろうとしている時に、従っていない人は和を乱して勝手な行動をとっているように見える」(朝日デジタル2日)として、「異端者に正義の鉄槌(てっつい)を下し、攻撃衝動を発散している」と捉えている。

 政府から正確な情報が発信されているのか検証する必要もあろう。体の異変を訴えてもすぐにPCR検査を受けることができないことも不安を高めているに違いない。

■    ■

 欧州が発祥の医療関係者に感謝の気持ちを伝える動きが県内でも出ている。県庁では毎日正午に一斉拍手を始めた。医療機関へはマスクなどの医療物資や食料品が寄せられている。県立南部医療センター・子ども医療センター(南風原町)は病棟の窓に特大の「応援ありがとう」のメッセージを掲げて感謝の気持ちを伝えている。

 医療従事者の献身的な努力に応えるためにも私たち一人一人は感染を回避する行動を徹底することが不可欠だ。

連載・コラム
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間