新型コロナ沖縄の今

医療現場に「命の選別」という苦悩を負わせないために…社会全体で考えるべきこと

2020年5月5日 06:00

 限りある医療資源をどう割り振るか。新型コロナウイルスの患者が増え続けた場合、医療従事者は「命の選別」に直面することになる。望ましい医療の在り方を考える琉球大学病院の臨床倫理士、金城隆展さん(48)は「できる限り大勢の命を救う手段は何か。医療現場だけでなく、社会全体が考えておく必要がある」と今後想定される流行のピークを見据える。(社会部・下地由実子)

臨床倫理士の金城隆展さん(本人提供)

臨床倫理士の金城隆展さん(本人提供)

 症状を診て治療の優先順位を付けるトリアージのような「命の選別」について、金城さんは「根本の問題は資源が限られていること」と指摘する。マスクも防護服も集中治療室も潤沢にあれば必要な全ての人に使えるが、実際には足りなくなることがある。そこで「配分の問題」が生じる。

 特に人工呼吸器やエクモ(体外式膜型人工肺)など高度な医療資源は生死に直結する。金城さんは「配分には結果とプロセス(経過)の両方が適正であることが必要だ」と説明する。

■公正な基準

 国内では医師らが感染爆発時の人工呼吸器などの配分について議論を始めた。金城さんは、(1)できるだけ多くの命を救うために(2)生存可能性の高い人-という2点を重視する。

 ルール作りには「一般の価値観に配慮し受け入れられるものにすることが大事」として、医療職に偏った考え方にならないようにくぎを刺す。

 既に、全国的には障がい者団体などから「後回しにされないか」と危ぶむ声が上がっている。金城さんは「あくまで選別は生存可能性で判断されるべきだ。そうでなければ不正義だ」と強調する。

 患者に一度装着した人工呼吸器などを取り外し、別の患者に着け直す「再配分」まで既に議論は及んでいる。金城さんは、医療者は本人や家族に対し、より生存可能性の高い人へ機器を移すことがあるかもしれないと事前に伝えるべきだと考えている。「それが患者さんへの敬意になる」からだ。

 若い人とお年寄り。新型コロナとそれ以外の病気。本当に生存可能性を比較することはできるだろうか。「本当は比べたくない。現実になった時、判断できるかどうか。自信がない」。金城さん自身も揺らいでいる。

■自ら律する

 金城さんは「感染が一気に拡大してしまうと、『誰が生き、誰が死ぬか』との選択を医療者に強いることになってしまう。私たち一人一人の行動が問われている」と予防を呼び掛ける。

 コロナ禍が終息する気配がない中、社会全体の自粛疲れを懸念し、長丁場を乗り切るキーワードに「自律」を挙げる。「手を洗う時、何のため、誰のためか想像してほしい。見えない先に、守るべき高齢者や基礎疾患のある人、医療者がいる。自ら意味を見つけて行動することで耐えられると思う」と語った。

●疑問・困りごと募集

 新型コロナウイルスの感染が広がり、くらしや経済、学校生活に影響が広がっています。読者の皆さんがいま困っていることを、ぜひお寄せください。沖縄タイムスは、県民の「疑問」や「困り事」などを共有する企画を始めています。

 受け付けは下記から特設サイトにアクセスするか、郵送で郵便番号900-8678、那覇市久茂地2の2の2「沖縄タイムス編集局社会部」まで。ファクスは098(860)3483。メールはshakai@okinawatimes.co.jp

 >>特設サイトはこちら


連載・コラム
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間