大弦小弦

どんな手洗いにも哲学はある

2020年5月6日 08:25

 「どんな髭剃(ひげそ)りにも哲学はある」。村上春樹さんの小説で、45歳のバー経営者が主人公にこんな助言をする。何げない日常の所作にも意味がある。経営者と同じ年齢になり、言葉をかみしめる。「どんな手洗いにも哲学はある」と

 ▼新型コロナウイルスは政府が緊急事態宣言を月末まで延長し、県も休業の要請期間を20日まで延ばした。バーなど飲食店の経営者には「5月6日まで」と歯を食いしばった人もいただろう

 ▼少なくともあと2週間、耐えなければ-。帳簿を眺め、ため息をつく姿が浮かぶ。私たちにできる最初の一歩は、手洗いの意味を考えることかもしれない

 ▼「何のため、誰のためか想像して」「見えない先に、守るべき高齢者や基礎疾患のある人、医療者がいる」。臨床倫理士の金城隆展さんが本紙で語った言葉に、深くうなずく

 ▼旧知の食品卸社長は「コロナ前に戻る期待はできない」とシビアに捉える。宣言の解除後も観光客の回復に時間がかかる。取引は縮み、週休3日制を導入した。名刺に「ネバー ネバー ギブアップ」と刷り、懸命に前を向く

 ▼ひげそりの格言は、英作家サマセット・モームの引用という。モーム45歳の年、スペイン風邪の第2波が世界を襲った。人は何のため手を洗うのか。その問いから取るべき行動が見える。社会を取り戻すまで、もう一踏ん張り。(吉田央)

 
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