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社説 [外出自粛と児童虐待]SOS拾う仕組み急げ

2020年5月10日 10:26

 新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や生活不安で児童虐待が深刻化している。県内の子ども支援団体職員のもとには、ふだん月5~10人の相談が、4月は30人と約3倍以上に増えた。父親が家で酒を飲み続けて暴言を吐いたり、両親から物を投げつけられたりするなど、コロナ禍のストレスを子どもにぶつける親の姿が目立つ。

 子どもたちから連絡が来るのは平日の昼間や深夜など、親の留守中や寝静まった時間帯だ。家が安全な場所ではない子どもにとっては、外部と連絡を取ること自体難しいということがうかがえる。ほかにも、スマートフォンなど連絡手段を持っていなかったり、幼いためにSOSを発信することができない子もいることを鑑みれば、寄せられた相談は氷山の一角だ。

 安倍晋三首相は4月24日、コロナ禍で増える恐れのある児童虐待対策の強化を指示。厚生労働省は同27日、市町村が設置する「要保護児童対策地域協議会」に登録されている子どもについて、週1回は学校や幼稚園などが状況確認するよう通知した。文部科学省も全児童・生徒を対象に2週間に1回程度、学校が電話などで心身の状態を把握するよう通知している。

 しかし対応は自治体によって差が出ている。県内では5月に入っても、新学期からの担任と連絡をとっていない子どももいるなど、休校措置からほとんど連絡のない学校もある。外出自粛を受けて、民生委員・児童委員など地域活動も縮小している。県や自治体は学校や保育園による連絡の徹底など、家庭に埋もれた子どもの声をすくいあげる仕組みづくりを急ぐべきだ。

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 休校や休園による虐待の潜在化の懸念も出ている。奈良市では市内の学校が休校した3月、児童相談所などでの虐待相談対応件数が前年同月比で減少した。沖縄県の児童相談所でも、相談件数は「増加傾向にない」という。こうした背景には、休校や休園により、教員や保育士などが、子どものあざや話し方から虐待を疑い通報するケースが減っていることがあるとみられている。

 新型コロナを理由に、児相などの家庭訪問を拒否する保護者も出ている。従来から見えにくかった児童虐待は、コロナ禍でますます可視化が難しくなった恐れがある。

 児相や県警などの虐待対応機関は、外出自粛の影響を十分に勘案した上で対応に当たる必要がある。

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 国が一律で支給する10万円の「特別定額給付金」も、虐待を受けている子どもには届きにくい。児童養護施設などに入所した子どもへは施設による申請を認める一方、住民票を移さずに親元から逃げて1人暮らしする場合や、親と同居する子どもは受け取れない可能性がある。

 リーマン・ショック時の経済不安で2009年に支給された「定額給付金」も虐待を受ける一部の子どもへは届かなかった。家族単位の支給は現代の家族のありようにそぐわない。国は一人一人に届く支給方法の構築を急ぐべきだ。

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