〈わたしと同じサイズの足幅をもった男は、なんの苦痛を感じることもなく、わたしより二、三倍も幅広い選択を楽しんでいたなんて〉。女性学研究者の田嶋陽子さんはエッセー「自分の足を取りもどす」で、靴を巡る不公平についてつづった

▼「女らしさ」を求められ、窮屈なハイヒールを我慢して履いていたら足腰を痛めた。偶然履いた男物の靴の快適なこと。社会の求めに足を合わせるのをやめた。書いたのは1985年

▼34年を経て昨年、職場でのヒール靴強制に異議を唱える「#KuToo」運動が広がった。なぜ、女性だけが強いられるのか。問いに応えるべく、ルールを見直す企業が出てきた

▼全日空は今年5月から、女性の客室乗務員らが勤務で履く靴はヒールが必要だとしていた規定を改めた。日航も4月から、ヒールがない靴も履けるようになった

▼「安定して歩けることや、つま先や腰の負担軽減を考慮」「ジェンダー平等に配慮」。至極まっとうな理由だと、誰もが思うのではないか。社会通念や慣習の名の下、必要でないルールがどれほど女性を縛ってきたのだろう

▼田嶋さんは文春オンラインのインタビューで、選択できることの大事さを挙げている。一人のツイートから始まった「#KuToo」。不当な苦痛を強いられない社会へ小さな一歩をつなげたい。(大門雅子)