社説

社説 [検察庁法改正案] 一体誰のため 何のため

2020年5月12日 11:03

 検察官の定年を現行の63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案の実質審議が8日から始まった。

 ツイッター上に抗議の声があふれたのは、翌9日から10日にかけてのことだ。

 「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿が、市民だけでなく著名人からも相次いだ。

 「摩訶不思議で理解不能。なんのために?誰のために?この大変な時期に姑息(こそく)な事をやってんだい?」(元格闘家、高田延彦さん)。

 高田さんをはじめ俳優の井浦新さん、浅野忠信さんら著名人の投稿が相次いでリツイートされ、その数は一時480万件を超えた。

 投稿は週末の夜から急増した。読み取れるのは、法案の中身に対する強い危機感と、この時期にあえて不要不急の問題法案を提出したことに対する怒りである。

 政府の新型コロナウイルス対策そのものが、国民から厳しい批判を浴びている。それなのに、火事場泥棒のように法案を押し通そうとする。その姿勢に、強烈な不信感が示されたのである。

 野党が反対しにくいように政府は、国家公務員の定年を65歳へ段階的に引き上げる国家公務員法改正案と検察庁法改正案を一緒にして「束ね法案」として国会に提出した。

 検察官の定年延長問題をただすため野党が森雅子法相の出席を求めたのに対し、自民党は応じなかった。

 とてもまっとうなやり方とは言えない。

■    ■

 発端は、1月末、定年退職間近だった東京高検の黒川弘務検事長の定年を半年間延長するという異例の閣議決定を突如として行ったことだ。

 現行の検察庁法では検察官の定年は63歳(検事総長は65歳)と定められており、延長規定はない。

 森法相は当初、国家公務員法の延長規定を当てはめたと説明していた。いわば脱法的に延長を強行しようとしたわけだ。

 その後、同法の延長規定は検察官には適用されない、との政府答弁が存在することが明らかになり、閣議決定の違法性が浮上。ここに至って安倍晋三首相は2月13日、法解釈を変えた、と衆院本会議で答弁した。

 行政府がみだりに法解釈を変更すれば、三権分立が損なわれるのは明らかだ。ましてや黒川氏は政権に極めて近いことで知られる人物。定年を半年延長すれば検事総長就任の道が開ける。

■    ■

 法案は、黒川氏の定年延長を後付けで正当化するものであり、特例を設けることで政府の意向が人事に反映されやすい仕組みになっている。

 検察官が持つ公訴権は、極めて重く大きな権限だ。1985年に検事総長に就任した伊藤栄樹氏は、部下にこう訓示したといわれる。「巨悪を眠らせるな、被害者と共に泣け、国民に嘘(うそ)をつくな」

 このような形で安倍政権まる抱えの検事総長が誕生した場合、国政全般に及ぼすマイナスの影響は計り知れない。黒川氏の定年延長の閣議決定を早急に見直すべきだ。

 
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