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コロナ禍を機に考える「定年後の自分」 62歳元部長が地域で悪態をつき孤立する現実

2020年5月17日 08:00

[高田明和ITmedia]

 「朝、店頭に並べない現役世代を尻目にマスクを買いだめする老人」

 「本当は在庫を隠しているのだろうと店員に食い下がる高齢男性」

 「列に割り込み、注意した人に暴力を振るう70代男性」……。

 今回のコロナ禍では日本全体が緊張感につつまれるなか、一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に対し、「暴走老人」などといった批判が生まれ、新たな火種となりそうな状況です。一方で、高齢者がなぜそのような行動に走るのかを、自分の将来の姿に重ね合わせながら考えるきっかけにもなった人は多いのではないでしょうか。

 定年を境に男性は、それまでの会社生活とは異なる環境変化に戸惑い、なかにはうつや認知症を引き起こしたり、病気までとは言わないまでも、怒りっぽくなったり、暴言や奇行が目立つようになったりするケースが見受けられます。それらは介護や認知症並みに地域や家庭での深刻な問題になっているのが現実です。

 そこで大事なのが50代の現役のうちに、定年後のさまざまなことを想定しておき、準備しておくことです。この連載では、『定年を病にしない』(ウェッジ刊)より、医学博士の高田明和氏が、50代のうちに「定年後の自分」に早く向き合う必要性を事例とともにお伝えします。今回は、定年後に地域や家庭で孤立を深めていった男性の事例です。

コロナ禍で日本全体が緊張感につつまれるなか、一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に批判が生まれている。今からできることがあるはずだ(以下、写真提供:ゲッティイメージズ)

承認欲求が満たされない定年男性ほど悪態をつきやすい

 中堅広告代理店の企画営業部で部長を務めた晴彦(62歳・仮名)は、昔からものごとを批判的にしか見ることができないひねくれ者だった。小さなことでもネチネチと批判するため、会社で嫌われるだけでなく、家族からも嫌がられていた。

 定年後は再就職先が見つからず、1日の大半をリビングのソファで過ごしていた。ただ、近所に幼稚園があるため、少しでもうるさいと幼稚園や区役所にクレームの電話を入れ、時には幼稚園まで怒鳴り込んだ

 自宅があるマンションのごみ出しの日はごみ庫に入って、きちんと分別しているかごみ袋を開けてチェックをした。分別できていないごみ袋は、住所が確認できれば玄関先まで持っていった。見かねた妻が注意すると、「マンションのモラルをよくするためだ」と言ってやめることはなかった。

 晴彦さんの悪態は、いろんな理由があると思います。園児の声がうるさいだけでしたら、窓を閉めればいいだけのことです。それなのに窓を開け、聞こえるようにしているわけです。そんなことをしていると、自分が孤独であるのを実感することもあるでしょう。子どもにはまだ将来があるので、嫉妬することもあるかもしれません。

 このようなことを書くと考えすぎと思う人もいるでしょうが、実際には珍しくはありません。ものごとを批判的にしか見ることができない晴彦さんならなおさらです。

定年を病にしない』(ウェッジ刊)

 定年退職者のクレーマーに管理職だった人が多いといわれていますが、部下に批判的なダメ出しをしていたのが癖になっている人が多いのでしょう。これは部下だから許されていただけですが、住んでいる地域でやられたら、家族がたまったものではありません。

 また、定年になって肩書がなくなり、孤独になったことが引き金となっているのでしょう。働いていなければ、誰からも必要とされていないと感じる人は少なくありません。

 そのため住んでいる地域で存在感を示そうとしてしまうのです。それなのに少しでも注意されるとカッとなってしまい、自分が間違っていても謝らない人もいます。

 この話をある編集者にすると、いかにも高そうな身なりをした70代の高齢者が本屋のレジの列を無視して割り込もうとしたので注意したら、悪態をつかれたといっていました。なんとこの高齢者、店を出ていくときに列の人たちに向かって「アウシュビッツ! アウシュビッツ!」と怒鳴ったというのです。これではいくら仕事ができて、お金持ちの人でも、人間としての品格が疑われても仕方がありません。

カッとなってしまったら、いくら仕事ができても、人間としての品格が疑われかねない
 
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