■モチベーション
1年10カ月ぶりのリングとなった2月13日の復帰戦。比嘉は大歓声の中から客席にいる野木氏の声を聞き分けて必死に戦い、勝利をもぎ取った。試合後、練習不足とモチベーションの低い理由を記者団に聞かれ、「野木さんがいないから」と断言。ジムへの決別の言葉だった。
3月13日の満了を待って、比嘉はジムとの契約を解除し、野木氏との師弟コンビを復活させた。大湾硫斗も含めた3人で近くスポーツマネジメント会社と契約し、新興のジムで再スタートを切る予定だ。
■故小出義雄氏との縁
野木氏の高校時代からの師は、陸上女子長距離の指導者で五輪金メダリストの高橋尚子らを育てた故小出義雄氏。生前、孫弟子の比嘉をかわいがってくれたという。
「昨年4月に亡くなる前、集中治療室に入った監督を見舞った時、第一声は『大吾は練習やっているか?』だった。意識がもうろうとする中、死の直前まで大吾を気に掛けていた」と野木氏は振り返る。「だから僕には、大吾を再び世界王者にする責任がある」と力を込めた。
■結果で恩返し
比嘉は、計量失敗からの2年間について「自分の迷いもあり、世の中の複雑さも痛いほど味わった」と語る。「結果的に多くの人たちに迷惑もかけたが、これからは言い訳のできない環境で全力を尽くし、再び世界を取る。結果で恩返しをしたい」
現在16勝(16KO)1敗でWBC世界バンタム級7位。再び頂点に駆け上がるパワーを拳に宿すため、自分が選んだ道を走り続ける。
(小笠原大介東京通信員)