自宅アパートの階段にカミキリムシがやってきた。光沢のある黒い体に白の斑点をまとい、つんと触角を立てている。そばを通るたびに、ごま粒の目でじっとこちらをうかがっている

▼梅雨に入り、朝の鳥のさえずりはカエルの大合唱になった。車を走らせれば、しっとりとした山の緑が伴走してくれる。先日、山越えの途中で迷い込んだ小道の先は、巨大なヘゴの楽園だった

▼「やんばるで違法伐採、昆虫採集目的か」。ゴールデンウイーク明けの記事にはやりきれない思いだった。国立公園内の行楽客による所業とみられ、マナー違反や違法行為がなくならないという

▼琉球王国の時代から人々はやんばるの森と寄り添ってきた。生活の基盤や戦後復興の需要に応え切り出されてきたが、先人たちの再生への知恵と努力で豊かさを取り戻している

▼開発任せではなかったからこその奇跡の生態系。世界遺産登録も見据え、どう使い、どう守り育てるか。度々見受けられる森林内での心ない行為に、やんばる学びの森センター長の山川雄二さん(55)は「安易な自己満足」と戒める

▼世界を覆うウイルス発生の一因に人類の自然破壊が指摘されている。生態系が侵され、野生の宿主から人へウイルスが広がっているという。さながら自然界からの警報。人の思い上がりと存在の小ささを思う。(粟国雄一郎)