記者が見た あの勝負

[記者が見た あの勝負] 沖尚と興南、3時間49分の熱闘 全力プレーの球児に感涙

2020年5月18日 06:30

2019年7月21日高校野球沖縄大会 決勝

夏の沖縄大会決勝を伝える2019年7月22日付スポーツ面

我喜屋あかね

夏の沖縄大会決勝を伝える2019年7月22日付スポーツ面 我喜屋あかね

 試合を見ながら涙があふれてきた。2019年7月21日、沖縄セルラースタジアム那覇であった、夏の甲子園出場を懸けた沖縄尚学と興南の決勝戦。記者として冷静に見なければいけないと分かっている。それでもここまで心を揺さぶられた経験は初めてだった。

 運動部に配属されて4年目。高校野球担当として沖縄大会決勝を見るのも4度目だった。特に、夏の決勝戦は取材にも熱が入る。3年生にとっては最後の大会。選手たちも、この大会に懸ける思いが違う。

 決勝での私学対決は1999年以来20年ぶり。私は2017、18年と夏の甲子園に出場した興南に分があると考えていた。エースの宮城大弥は全国でも名が知れたプロ注目の左腕。加えて1、2年と沖縄大会決勝を投げ、優勝投手となった経験値もある。1年夏から取材してきた選手であり、一人の高校生として成長した姿を集大成の甲子園で見たかったのも本音だった。

■四球で決勝点

 午後1時3分。1万1千人の観客が詰め掛けた球場に、試合開始のサイレンが響く。両雄の意地がぶつかり合い、九回を終えて5-5と勝負はつかない。延長十二回に沖尚が2点を勝ち越し、勝利を決めたかに見えた直後、興南が再び追い付いて振り出しに戻した。

 十三回表の沖尚の攻撃。2死満塁でマウンドに立つ興南の宮城の前に、沖尚主将で高校通算33本塁打を誇る水谷留佳が立った。フルカウントから投じた141キロの直球は外角低めに外れて痛恨の押し出し四球。これが決勝点となった。

 3時間49分の試合時間は県高野連発足後、記録のなかった3大会を除いて最も長い。3連覇を狙う興南に、沖縄水産に雪辱して勢いのある沖尚。最後まで諦めない粘り強さが際立ち、翌日紙面で「沖縄球史に残る熱戦」と書いた。「多くの人に最高の試合を見せてくれた」と興南の我喜屋優監督。高校野球の魅力が凝縮された一戦だった。

■最弱から躍進

 沖尚は前年の新人中央大会で初戦敗退、秋は準決勝でノーヒットノーランを食らった。春は3回戦でサヨナラ負けと、前評判は決して高くなかった。かつて比嘉公也監督からナインは「沖尚史上最弱以下」とまで言われたという。

 勝敗を分けたものは何だったのか。比嘉監督は「勝つなら、連投の宮城からと思っていた」と明かした。宮城は前日の美里工業との準決勝で136球、決勝でも229球を投げた。対する沖尚は3投手を継投させ、サヨナラを狙った興南の反撃の芽を摘んだ。

 采配もはまった。十二回の2得点は途中出場した吉里和己の中越え三塁打。前を打つ4番打者が敬遠された直後、結果を残した。「沖水と興南の牙城を崩すのは沖尚だと意識させてきた。まさかその2校を倒してくれるとは」と比嘉監督。普段は厳しい指揮官の想像をも超えた。

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