「どんな時も私の味方であり、愛情を注いでくれたことへの恩返し」。そんな思いで介護休暇を取り、認知症とがんを患う96歳の祖父を在宅で支える女性がいる。那覇市出身の会社員、諸見里加菜子さん(34)。祖父の顔が並んだ自身のインスタグラムには「在宅介護 最強孫」のプロフィル。伯母ら家族と協力し、訪問医療・介護のプロに助けられながら食事、排せつなどあらゆる世話をこなし「介護は楽しんだもん勝ちです」とプラス思考で日々を送る。(学芸部・新垣綾子)

「すべてが祖父優先の生活です」と話す諸見里加菜子さんと祖父の嘉陽宗安さん=4月、那覇市内の宗安さん宅(諸見里さん提供)

4年ほど前に撮られた嘉陽宗安さん(左)と妻クラさんのツーショット。支え合って生きてきた=那覇市内の宗安さん宅(提供)

諸見里加菜子さんが祖父の体調や言葉のやり取りをつづる「じじ録」。摂取カロリーや血圧なども毎日、事細かに記録している(提供)

「すべてが祖父優先の生活です」と話す諸見里加菜子さんと祖父の嘉陽宗安さん=4月、那覇市内の宗安さん宅(諸見里さん提供) 4年ほど前に撮られた嘉陽宗安さん(左)と妻クラさんのツーショット。支え合って生きてきた=那覇市内の宗安さん宅(提供) 諸見里加菜子さんが祖父の体調や言葉のやり取りをつづる「じじ録」。摂取カロリーや血圧なども毎日、事細かに記録している(提供)

 関節が固まり屈曲した祖父・嘉陽宗安さんの手指のにおいを、よく嗅ぐという。「手の洗浄前には必ず。握った状態だから、だいたい蒸れて汗臭いけれど癖になる」と笑う。2年前に93歳で亡くなった祖母クラさんを合わせると約15年、父方の祖父母の介助・介護を続ける。那覇市の祖父宅で寝起きする生活を、県外で単身赴任中の夫も理解し応援してくれるという。

■「無敵」の2人

 宗安さんは戦時疎開先の大阪で、地元出身のクラさんと出会い結婚した。現役時代は100人もの部下を率いる土木建設業を営んでいたこともあり、曲がったことが嫌いで情に厚い親分肌。一方のクラさんは誰にでも分け隔てなく接し、近所に住む「カギっ子」たちをよく家に迎え、お好み焼きやお菓子を食べさせる優しさの持ち主だった。両親が共働きで忙しかった加菜子さんは祖父母と過ごした時間が長く「2人は私がつまずいた時も、本音で的確な助言をくれる無敵の存在だった」と振り返る。

 介護は決して楽ではない。2016年夏にレビー小体型認知症と診断された宗安さん。幻視や妄想、睡眠時の異常行動といった特徴がある病で、昼夜逆転の日も珍しくない。アルツハイマー型認知症だったクラさんと宗安さんをダブル介護していた頃は「睡眠は1日3時間ほど。仕事と介護、家事の掛け持ちはしんどいを超えていた。体力的にというよりも、2人の体がとにかく心配で」。

 「若いのに」「どうしてそこまでやれるの」。周囲にはよくそう驚かれるが、答えはシンプルだ。「もらったたくさんの愛情を返す。私にとっては自然なこと」。クラさんの死を通して「介護には必ず終わりが来る」と痛感した。極力悔いを残したくないと、今は常に「祖父にとってのベストは何か。祖父の笑顔が増えることなら何でもしよう」と意識する。昨年12月には勤め先から介護休暇を取得し、とことん向き合うと誓った。宗安さんの右の腎臓付近にがんが見つかったからだ。