映画の画面サイズの中で、一番ワイドな横長画面を「シネマスコープ」略して「シネスコ」と呼んでいます。スクリーンいっぱいに映像が広がり、大きさだけで感動させてくれる。この迫力は、映画館の特権。そうそう、「男はつらいよ」シリーズは全てシネスコサイズ。寅さんを囲む家族全員が横長の画面にズラリ! あの密集感がたまらない。あぁ懐かしの三密。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト

 さて、現在上映中の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」も、シネスコサイズを生かした名作。とにかく画面いっぱいに男臭を映し出してくる。ドアップなのだ。

 真っ黒に焼けた、ギットギトでテッカテカのガンマンが、大きなスクリーンの端から端までを、目と鼻だけで埋め尽くす。しかも長尺。まぶしそうに細めた目、鼻のシワ、脂ギッシュな肌が伝える、西部開拓時代の熱。灼熱(しゃくねつ)の太陽、砂埃、干からびてしまいそうな空気が漂ってくる。暑くて、汗臭いわ。

 土地の利権争いと、ガンマンの復讐(ふくしゅう)劇。確かそんな話だった。顔面ドアップが放つ男臭に脳天がしびれ、ストーリーは忘却の彼方。ヴィスコンティの代表作「山猫」で、見目麗しい淑女を演じたクラウディア・カルディナーレの、いい意味で変わり果てた娼婦(しょうふ)姿も見どころのひとつ。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で上映中