賭けマージャン疑惑を報じられた東京高検の黒川弘務検事長(63)が、法務省の調査に事実関係を認め、辞表を提出した。

 検察ナンバー2の検事長という立場にありながら、しかも新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下での不祥事である。辞職は当然だ。しかし、これで幕引きというわけにはいかない。

 問題は週刊文春の報道で発覚した。黒川氏は今月1日と13日に、東京都内の産経新聞記者宅で、同社記者2人と朝日新聞の元記者1人の4人で賭けマージャンをした疑いがあるとの記事だ。

 金銭を賭けたマージャンは刑法の賭博罪に当たる可能性がある。移動の際に使用したハイヤー代は記者側が支払ったとされ、国家公務員倫理規程への抵触も指摘される。

 辞表を提出した黒川氏は、訓告処分になった。法務省の内規に基づくものだが、検察の信頼をおとしめた責任に対して軽すぎるのではないか。賭博行為をしたのだから検察は厳正に捜査をするべきだ。

 黒川氏は「緊張感に欠け、軽率に過ぎるもので、猛省している」とコメントを出した。検事長としての責任に対する説明は不十分だ。

 一方、賭けマージャンに参加した新聞社も説明責任を果たし、適正に処分することが必要だろう。

 黒川氏を巡っては、政府が定年延長できない法解釈を変更し、閣議決定で延長を決めた経緯がある。政府は「余人を持って代えがたい」としたが、安倍晋三首相の責任も極めて重い。

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 検事長の定年延長を決めた1月の異例の閣議決定については、検察OBからも違法性が指摘されている。

 元検事総長らが法相宛てに提出した反対意見書では、解釈だけで法律を運用しようとする内閣の介入について、絶対王政を確立したフランスのルイ14世を引き合いに、「朕は国家である」という言葉をほうふつさせると痛烈に批判した。三権分立の否定につながりかねない危険性を明確にしたのだ。

 安倍政権が黒川氏にこだわるのは、首相主催で支援者らを招く「桜を見る会」を巡り、全国の弁護士らが告訴の準備を進めていることも背景にあるといわれる。

 時の政権にとって都合がいい検察幹部をとどめるという横暴がまかり通れば、政治不信にとどまらず、国家の危機につながる。検察の独立性を脅かす認識の欠如はおごり以外のなにものでもない。

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 野党は「脱法的な閣議決定で検事長の地位にとどめた内閣全体の責任」として、安倍首相らを追及する構えだ。徹底追及を求めたい。

 世論の厳しい批判を受けて検察庁法改正案の今国会での成立は見送られたが、政権が検察人事に介入できる特例規定は残ったままだ。閣議決定の撤回もされていない。

 安倍首相は「当然責任がある。批判は真摯(しんし)に受け止める」と語った。脱法的な手法で定年を延長し、三権分立を脅かした責任を取るというなら、進退も含め決断すべきだろう。