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「悲しんでも決定変わらない」 沖縄の甲子園出場経験選手 中止決定かみしめ気丈に前へ 

2020年5月23日 05:00

[聖地に挑めず 夏の甲子園中止]

 太陽を反射して光り輝く黒土に、ふかふかした芝。グラウンドをぐるりと囲むスタンドは大観衆で埋まり、時折、熱気に包まれた甲子園球場を名物の「浜風」が吹き抜ける。

 憧れの聖地で先輩たちとプレーした3年生が、最後の夏を迎える。だが、もうあの場所には戻れない。

 「本当に何も覚えていないんです」。昨夏、5年ぶりに甲子園へ出た沖縄尚学主将の與谷友希とエース永山蒼は口をそろえた。

 センバツ準優勝の習志野(千葉)との1回戦。試合前のシートノックや開始の整列も、試合展開すらもほとんど記憶にない。特に永山は「試合後、バスのカーテンを閉めて甲子園を出発した時」からようやく思い出せるという。「気合の入り方がこれまでと全然違う。初めてあれだけ集中した」からだった。

 三塁手の與谷は、独特の雰囲気を感じた。「習志野の応援で球場が揺れ、それが甲子園なんだなって」。1点リードの九回に追い付かれ、延長十回にサヨナラ負け。「1球で流れが変わり、1点の重みを改めて知った」と振り返る。

 3年生になった。春は準々決勝で敗退。再び甲子園に出場しようと、チームが一つにまとまってきたさなか、コロナ禍で中止が決まった。

 決定から一夜明けた21日、永山は少しずつ実感が湧いてきたという。「今までやってきたことは何だったのか。この先どこにモチベーションを持っていくべきかが分からない」と胸中を明かす。

 與谷は「悲しんでいても決定が変わるわけじゃない」と気丈に振る舞うが、高校で野球を辞める仲間の心中を思うと掛ける言葉が見つからない。

 興南主将の西里颯は、まだ1年生だった2018年に初めて聖地を踏んだ。1回戦の土浦日大戦(茨城)、一打ごとに球場に響いた歓声が忘れられない。緊張はせず「出るからにはしっかり自分の持ち味を出そう」と気負いはなかった。4打数3安打の猛打賞で「応援団の声が甲子園中に響いていた」とプレーできる喜びをかみしめた。

 昨夏、3年生が引退して主将となり、悩み苦しんだ日もあった。秋、春と結果を出せなかったことに責任を感じていた。

 「もっと自分が変わった姿を見せないと。そうすればチームメートもついてきてくれる」。休校期間中は自主練習でレベルアップを図った。甲子園への思いを背中で示そうと必死だった。

 休校が明けた21日、興南では我喜屋優監督が3年生に語り掛けた。「基礎の根っこを作り続ければ、必ず人生のスコアボードに大量の花が咲く。こういう時こそ、この言葉があるんだ」。真剣な表情で耳を傾けていた西里は「ここで終わりじゃない。しっかり区切りを付けて切り替え、次につながるようにやっていかないと」とうなずく。

 同じ主将として、沖尚の與谷も思いは変わらない。「泣くのが悪いとは思わないけど、自分が落ち込む姿はみんなに見せられない」と自らを奮い立たせる。

 県大会では3年生26人全員のメンバー入りを望む。「みんなで頑張ってきた。全員で大会に出場し、今までやってきたことを出したい」。誰1人欠けることなく、最後の夏を笑顔で終わりたいと願っている。(我喜屋あかね)

 新型コロナウイルスの影響で、春のセンバツに続いて夏の甲子園大会も中止となった。聖地を目指した3年生や監督、独自の県大会を模索する高野連関係者の思いに迫った。

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