記者が見た あの勝負

中断してくれ…記者は願った「暴風の投てき」 あの経験が日本一の糧に[記者が見た あの勝負]

2020年5月25日 05:50

[記者が見た あの勝負]2019年8月8日 南部九州総体陸上 藤原孝史朗の円盤投げ

男子円盤投げ2投目で40メートル90を記録する沖縄カトリックの藤原孝史朗。3投目は強烈な風雨でファウルとなり予選落ち=2019年8月8日、タピック県総ひやごんスタジアム

南部九州総体で藤原孝史朗の予選敗退を伝える2019年8月9日付スポーツ面

新崎哲史

男子円盤投げ2投目で40メートル90を記録する沖縄カトリックの藤原孝史朗。3投目は強烈な風雨でファウルとなり予選落ち=2019年8月8日、タピック県総ひやごんスタジアム 南部九州総体で藤原孝史朗の予選敗退を伝える2019年8月9日付スポーツ面 新崎哲史

 報道エリアから見ながら嫌な予感しかせず、「中断してくれ」と願っていた。

 2019年8月、県内で9年ぶりの開催となった全国高校総体(インターハイ)「南部九州総体」。県勢で最も注目を集めていた選手の一人が、陸上男子円盤投げで全国ランキング1位の藤原孝史朗(沖縄カトリック3年)だった。

 身長181センチ、体重110キロの恵まれた体から鋭く円盤を放ち、メイン種目にした高2から記録を伸ばし続けていた。6月の九州総体を53メートル57で制し、県高校記録を10年ぶりに更新。優勝最有力候補と目され、自身も「地元で全国制覇」を掲げていた。

■最後の投てき

 しかし、思わぬ落とし穴があった。予選の8日はフィリピン沖で発生した台風9号が猛烈な勢力に発達し、沖縄本島に強い風雨をもたらしていた。

 ぬれたサークルでスリップを意識するあまり、1投目はファウル。続く2投目も強い振り切りができず、40メートル90にとどまった。出場66人中、成績上位の12人が決勝に進出するが、2投目までに予選1組33人中でも13位と苦しんでいた。

 ランキング1位として最後の33番目で藤原が3投目に。雨脚は徐々に強まり、他の種目は既に中断していた。全身を連動させて回転し、精密な振り切りが求められる種目だけに、私は「中断すべきでは」と思ったが、試技は続いた。サークルに入った時、風雨が最高に強くなった。

 そして、予感は現実に。投球動作に入った瞬間、手から円盤が滑り落ち、無念のファウル。最終記録は自己ベストを13メートルも下回り、予選敗退が決まった。

 私は雨でびしょびしょになったノートを手に、大きな背中越しに「中断してもよかったのにね」と言葉を掛けると、「1、2投目で記録を出せない自分が悪い。日本一の選手になるにはまだ早い」と言い訳はしなかった。

復活の県高新

 藤原の試技はその夜、全国ニュースのスポーツコーナーではなく、台風襲来の天気コーナーで放送された。翌日の本紙では「不運の敗退 急な風雨記録出せず」と高校生には少々、厳しい見出しがついた。試合後の落ち込みを見て、立ち直れるか心配した。実際、1週間も部屋から出ずに引きこもっていたという。

 

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