社説

社説[コロナと困窮]自殺リスクを懸念する

2020年5月25日 08:12

 新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり、収入が激減するなど、経済的に追い詰められている人が増えている。雇用情勢の急激な悪化と暮らしの危機は、2008年のリーマン・ショック時を超えると言っていいほどの深刻さだ。

 厚生労働省によると、新型コロナ関連の解雇や雇い止めは、21日時点で1万人を超えた。

 四半期ごとの契約が多く5月末に更新が集中する派遣社員の大量の雇い止めという「5月危機」もささやかれている。

 感染拡大が年末まで続けば、完全失業率は7・5%まで悪化すると推計するシンクタンクもある。本格的な影響はこれからだとされ、リーマン後の09年の5・1%を大きく上回るとの見方だ。

 最後のセーフティーネットと呼ばれる生活保護の申請件数もリーマン超えが現実味を帯びてきた。

 共同通信のまとめで、「特定警戒都道府県」に指定された道府県庁所在地の多くで、4月の生活保護申請が前年の2~5割増えていたことが分かっている。

 08年9月の生活保護受給者は約158万人だったが、1年後には約175万人と大きく増加。その後も厳しい雇用情勢が続き200万人を突破した。

 製造業の派遣労働者が中心だったリーマン時と違い、今回はより幅広い層に影響が及んでいる。

 感染への不安と先が見通せない不安が横たわる中、専門家からは自殺リスクの高まりを懸念する声も上がる。

■    ■

 自死の悩みを受け止める「沖縄いのちの電話」には4月以降、新型コロナに起因する経済的困窮や不安などを訴える相談が急増している。

 普段は女性からの電話が多いが、今回は男性が半数以上を占め、収入減で先行きが見えないといった悩みが相次いでいる。

 経済危機から精神的に追い詰められている人が増えているのだろう。外出自粛で孤立を深め必要な支援にたどりつくことができないのかもしれない。「店に客が来ず生活苦で死ぬしかない」など内容は切羽詰まっている。

 景気悪化による自殺リスクの高まりは、リーマン後に自殺者が増えたことからも明らかだ。

 心の問題は危機が一息ついた段階で表面化しやすいといわれる。過去の教訓を生かし心のケアを強めなければならない。

■    ■

 政府の緊急経済対策の柱である10万円の一律給付は、生活困窮に陥る人の収入を補うのには不十分だ。

 今は非常時の対応として、生活保護の支給要件の緩和や審査の簡素化など積極的な活用を促す時である。

 新型コロナ特措法の付帯決議には「自殺対策を万全に講ずる」との一文がある。政府には自治体や民間とも連携し対策を推進してもらいたい。

 事態が収束したとしても、失業率が高まり、自殺に追い込まれる人が増えれば、コロナ禍を乗り越えたとはとてもいえない。

 
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