ストレッチャーに横たわったまま、報道陣のカメラを見つめる眼光。顔や両腕に残る赤くただれたやけどの痕に、思わず息をのむ

▼京都アニメーション放火殺人事件で逮捕された青葉真司容疑者(42)。瀕死(ひんし)の状態から、ここまで持ち直した医療者の努力に頭が下がると同時に、36人の命が奪われた事件の重大さを考えると割り切れない感情が湧く

▼「2人ぐらいと思っていた」。青葉容疑者は逮捕状が読み上げられるまで、平成以降最悪の犠牲者数を知らずにいたという。突如未来を絶たれた命と、からくもつなぎ留めた命。理不尽という言葉では形容できない

▼今回の逮捕には懐疑的な見方もある。逮捕要件を満たしているかという点だ。刑事訴訟法は、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合と定める。会話ができるまで回復したとはいえ、ほぼ寝たきりの人を逮捕する必要はあったのか

▼SNSで、青葉容疑者が逮捕されるなら、東京・池袋で車を暴走し、母子2人を死亡させたとして在宅起訴された飯塚幸三被告(88)は逮捕されないのか、という投稿を見掛けた。もっともな意見だと思う

▼沖縄でも先日、刃物で脅して金を奪った米兵ら2人が逮捕されず書類送検された。拒まれたとしても、せめて米側に逮捕同意請求をすべきではないのか。権力の行使に疑念が持たれてはならない。(西江昭吾)