近所のパン屋では客が1組ずつ案内されるようになり、なじみの食堂のカウンターは座席が一つおきになった。心の絆は保ち、あくまで物理的な距離を置くという意味で、最近はフィジカル・ディスタンシング(身体的距離の確保)とも言うらしい

▼本紙に載った宜野座村のがらまんホールの写真は衝撃だった。2メートル間隔で座席に人を点在させると、398席の劇場は60人で満席に。ホールはガラガラ、舞台鑑賞の風景を一変させるかもしれない問い掛け

▼同ホールの佐久間恵美さんは「音の響きを体感できるのは劇場ならでは。心も震わせてくれる時間そのものにも価値がある」と話す。同時にライブ配信や舞台の映像化も方向性の一つという

▼先日、世界的なチェロ奏者のヨーヨー・マさんが、バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲をネットで無料配信した。世界36カ所を巡るツアーはコロナで休止中。犠牲者への追悼と社会の再生に思いを込めた

▼ツアーは日本では唯一、沖縄で開かれるはずだった。文化、音楽、自然を敬う沖縄の風習に感銘を受け、来沖は念願だったという

▼文化が私たちの想像力を膨らませ、より良い未来に役立てられるか-。ツアーはその探求のための対話と協働だとヨーヨー・マさん。11月に延期された公演はかなうだろうか。その魂に間近で触れてみたい。(粟国雄一郎)