社説

社説[中国の香港統制]頭越しは看過できない

2020年6月1日 07:53

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は、香港の治安統制を強化する国家安全法制を導入する方針を決定し、閉幕した。香港の一国二制度が重大な危機に陥る恐れが出てきた。

 香港で長引く共産党政権に批判的な抗議デモに対し、習近平指導部が直接封じ込めることを狙ったものだ。

 決定は「国家安全に危害を与える行為や活動を処罰する」「中央政府の国家安全関連機関は必要に応じて香港に機構を設立し、その職責を履行する」ことなどを明記している。若者らの反中国デモなどの押さえ込みが一層激しくなろう。香港に中国の機構を設置するのは、中国当局が直接、民主化運動の弾圧に乗り出すことに道を開くものだ。中国本土では共産党政権への批判や抗議活動が取り締まりの対象となっており、香港でも同じようになる懸念が現実のものになる。

 社会主義の中国に資本主義を併存させるのが一国二制度だ。香港は英国の植民地だったが1997年7月、中国に返還された。中国は香港に高度な自治を与え、50年間は中国と異なる政治、経済制度を認めると約束した。国際公約である。国家安全法制の導入はこれをほごにするものだ。

 中国政府は一国二制度は「一国」であることが前提で「二制度」は派生するものだ、という位置付けを繰り返し表明している。

 国家安全法制が導入されれば、言論や集会の自由が制限され、高度な自治を保障する一国二制度が形骸化されるのは間違いないであろう。

■    ■

 香港の憲法に当たる香港基本法では、国家安全条例は香港自らが制定するよう求めている。市民の根強い反対に遭い、制定できなかったことも中国政府が香港の頭越しに導入の決定を決めた理由とみられる。香港の自治権を大きく侵害しており、筋違いだ。

 香港では昨年、中国への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模な抗議デモが続いた。中国の習指導部は武力介入まで示唆したが、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は大規模デモに抗しきれず、改正案の撤回に追い込まれた。

 中国政府の強硬姿勢が裏目に出たのである。

 強権姿勢一点張りでは民主化を求める香港市民の反発を強め、政治的混乱を拡大させるだけだ。中国政府には自制を強く求めたい。

■    ■

 香港では、中国が民主化運動を武力弾圧した89年6月4日の天安門事件、6月9日は大規模デモ発生から1年目の節目が続く。

 国家安全法制の関連法は8月にも制定される見通しという。9月には香港立法会(議会)選挙がある。中国政府は民主派が過半数を占めることを恐れており、選挙前に成立させたい考えといわれる。

 米国は対抗措置を明らかにした。英米、オーストラリア、カナダは共同声明で深い憂慮を表明。米中対立は深まるばかりだが、日本をはじめとする国際社会は連携して国家安全法制の導入をやめるよう中国へ働き掛ける必要がある。

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気
沖縄タイムスのイチオシ