大弦小弦

[大弦小弦]「民度が低い」というレッテル

2020年6月10日 07:10

 駆け出しのころ、取材経験が豊富な先輩記者が憤慨していた。「沖縄県民は民度が低い」。本土大手企業の沖縄支店長が、懇親会で発言したという。先輩は反論し「許せない」と怒りをあらわにした

▼世間知らずの私は「本土の人は沖縄をそんな目で見るのか」と驚いた。民度は「人民の生活や文化の程度」を指す。「民度が低い」。たった5文字で住民の尊厳を根こそぎ否定する、残酷な言葉だ

▼新型コロナウイルスの死者数で、麻生太郎財務相は日本の死亡率の低さを誇るため、海外の人に「お宅とは民度のレベルが違う」と言うそうだ。「みんな絶句して黙る」。あまりの上から目線に、あきれているだけでは

▼東アジアには中国、韓国など日本より死亡率が低い国がある。民度より地域性かもしれない。そもそも民度という抽象的な概念で国民の質を否定される相手側が、いかに不快か。言う側は忘れても、言われる側は記憶に残る

▼「島々を通じて言えるのは、その後進性、民度の低さである」。東京、新潟、島根、長崎、鹿児島の5知事は1953年、離島振興法の制定を求める文書にこう書いた

▼同じ県内でも、島の人へ「低民度」のレッテルを貼る。こんな認識が今も残っていないか、島しょ県の住民として気になる。島を彩るのは住民一人一人の異なる個性。十把ひとからげにしてほしくない。(吉田央)

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