目の前に広がる海を最大限に生かし、憧れのカリフォルニアスタイルの家を建てた石井仁さん(47)。米西海岸を思わせる明るく開放的な空間で、自然とつながるスローな暮らしを楽しむ。

3階にあるLDK。特に、キッチンからの眺めは壮観。高さ3メートル、天井いっぱいまで設けた開口部の先に海と緑が広がり、まるで絵画のよう
 

石井 仁さん宅 RC造/自由設計/家族5人

家と一緒に成長

糸満市の海岸通り沿いに建つ3階建ての住宅は、大きなサボテンの植え込みが印象的。杉板仕上げの壁をアクセントにした北東側にあるアプローチの奥には水盤があり、水音が心地よい。

1階にあるのは、車庫と寝室。アプローチ奥の水盤に面して地窓を設けた寝室は、「昼は日差しが当たった水面が天井に映り、キラキラときれい。夜は照明で、雰囲気がグッと変わる」と石井さん。明るいチークの床に、お気に入りのアメリカン家具が映える。

吹き抜けになった鉄骨製の階段を上り、3人の子どもたちの個室がある2階を抜けて3階へ。キッチン越しに飛び込んでくる、海と緑が織りなす眺めに目を奪われる。「朝、昼、夜で、海と空の表情が変わる面白さがある」

乾いた質感の木目を生かしたキッチンは、料理人である石井さんと、やちむんが好きな妻・佳奈さん(38)のこだわり。2人で立っても楽に動けるように考慮し、造作してもらった。冷蔵庫や家電は、見えないようにキッチン背後のパントリーに収めている。「慣れれば、行き来も苦になりません」と佳奈さん。

自然と一体になる

ドライブ中に出合った海が見える土地にほれ込み、憧れていたカリフォルニアスタイルの家づくりを考え始めた。

ホームページの写真を全て見て、ここだ! と訪ねた建築士事務所の姿勢に信頼を抱き、設計を依頼。「手持ちの家具を伝え、細かく、丁寧にやりとりを重ねて設計してもらった。イメージしていたより、もっとすごい家ができました」

360度見渡せる屋上でのひと時が、石井さんの大切な時間。「時間のストレスから解放され、自然のリズムと一体になれる。家は生きる基盤。手に入れてからが本当のスタートだと思う。家に手をかけることを楽しみながら、家族も一緒に成長していきたい」
 

3階のリビングダイニング。空間とインテリアの調和を重視し、もともと持っていたアメリカン中古家具に合わせて内装をデザインした。床はタイルとフローリングをミックス
海に面した南側の外観。大型のサボテンを植え込み、カラーチェアをアクセントに飾って楽しむ
 

ここがポイント

眺め重視 3階にLDK配置

敷地は、南に海を望み、北側は前面道路、東西は隣家に接する。区画整理地内にあり、地区計画条例により境界線から1メートル後退させ、建物の高さは10メートル以下という制限もあった。その中で、海が最大限に望めるようにするため、建物配置と各階で階高を変えることで、3階建てでLDKを3階に設ける設計を実現した。

建築士の知念映子さんは、「現地でドローンを飛ばして建物の配置を決定。おかげで南面だけでなく、西側に設けた窓からも、遮られることなく海を眺めることができるようになりました」と話す。

1、2階にプライベート空間、3階にパブリック空間を区分け。3階まで吹き抜けになった階段を囲むように回遊式廊下を設け、各部屋をつなぐ。階段の最上部、3階の天井に天窓を設けて自然光を取り込むのに加え、暗くなりがちな2階部分は西側に半戸外の中庭を配し、全面サッシで区切ることで明るさを確保した。「人が動くことで、階段を通して風も光も流れる。人の声、気配も家全体で感じられます」

3階のLDKは、キッチンを軸に会話と料理が楽しめる造り。南面は3メートルの天井高までの大開口にし、開放的な空間に仕上げた。

3階の回廊廊下上部の天井裏には、伸縮式のはしごが設置されていて、天井裏から屋上へアクセスする。「塔屋を設けないことでコストダウンをはかり、意匠性にも配慮しながら、屋上でも楽しみたいという思いもかなえることができました」。

1階の寝室。地窓を設けることで、プライバシーを守りながら水盤の揺らぎや音を楽しめるようになっている。床は、アメリカン家具に合うよう、明るい色のチークを選んだ
 
外観のアクセントにもなっている杉板仕上げのアプローチ。その先に広がる緑と水盤が、心地よさと開放感をもたらす
 
30cm×60cm角のタイルを馬張りにし、ホテルライクに仕上げた浴室。「朝日の明るさを感じながら入るお風呂は最高」と石井さん
 
2階の廊下から、階段と中庭を見る。半戸外になった中庭には、さまざまなサボテンが鉢植えでディスプレーされ、見ているだけで楽しい
 

DATA
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:240.26平方メートル(73坪)
1階床面積:62.72平方メートル(19坪)
2階床面積:53.44平方メートル(16坪)
3階床面積:62.72平方メートル(19坪)
建ぺい率:30.33%(許容60%)
容積率:66.19%(許容100%)
用途地域:第二種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設計・構造:(有)アトリエ・門口 門口安則、知念映子
施工:(有)セイシン住興 高安弘樹
電気:(有)中原電設 池原啓太
水道:(有)ライフ工業 高山佳晃
キッチン:(有)MOV 照屋涼子
◆問い合わせ先:(有)アトリエ・門口
電話:098・974・3554
https://kadoguchi.net

取材/比嘉千賀子(ライター)

撮影/泉公(ララフィルム)