本紙総合面に載る砂川友弘さんの「時事漫評」を見ると、毎回口元が緩む。基地問題や政局、今ならコロナ禍の社会情勢を読み解き、権力への批判をユーモアにくるんでちくりと刺す。これぞ風刺漫画の醍醐味(だいごみ)だ

▼ツイッターで拡散された、こちらのイラストは風刺とは呼ばない。一個人をターゲットにした悪質な誹謗(ひぼう)中傷でしかない

▼性暴力被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんが、漫画家はすみとしこ氏を相手に損害賠償とツイッター投稿の削除を求める訴訟を起こした。虚偽の内容で名誉を傷つけられたと訴え、リツイートした男性2人の責任も問う

▼イラストは伊藤さんと容易に連想できる女性を描き、「枕営業大失敗」などと中傷する。性被害者をおとしめるセカンドレイプそのもので、漫画家の「風刺画は完全なるフィクション」との言い訳が寒々しい

▼手塚治虫は著書「マンガの描き方」で、漫画の本質は風刺とした上で「これだけは絶対に守らねばならぬことがある。それは、基本的人権だ」と記した。戦争や災害などの犠牲者をからかうようなことはするなと

▼伊藤さんはネットでの誹謗中傷に沈黙すれば、同じような経験をした人を傷つけてしまうとの思いで提訴に踏み切った。勇気を持って闘い続ける人の背中をペンで刺すようなことがあってはならない。(大門雅子)