記者が見た あの勝負

電話とらない監督 そのとき“秘策”が生まれた 琉球アスティーダの大逆転劇

2020年7月2日 06:30

[記者が見た あの勝負](12)2020年2月16日 Tリーグ男子アスティーダ最終戦

アスティーダ-彩たま 得点し、ガッツポーズするアスティーダの有延大夢。逆転勝利の口火を切った=2020年2月16日、埼玉県・毎日興業アリーナ久喜(小笠原大介東京通信員撮影)

アスティーダの初のプレーオフ進出を伝える2020年2月17日付スポーツ面

又吉健次

アスティーダ-彩たま 得点し、ガッツポーズするアスティーダの有延大夢。逆転勝利の口火を切った=2020年2月16日、埼玉県・毎日興業アリーナ久喜(小笠原大介東京通信員撮影) アスティーダの初のプレーオフ進出を伝える2020年2月17日付スポーツ面 又吉健次

 卓球Tリーグ男子の琉球アスティーダが大一番を迎えた。今年2月16日の2019~20シーズン最終戦で彩たまとの直接対決に勝てば、初のプレーオフ(PO)進出が決まるのだ。リーグ初年度の1年前は最下位だったチーム。エース丹羽孝希の退団で苦戦を予想しただけに、担当記者として興奮していた。

 アスティーダは全国各地を転戦する。アウェー戦は同行できないので取材はウェブ中継を視聴し、試合終了後に時間を見計らって監督の携帯電話を鳴らし、話を聞いている。

■前日岡山に大敗

 最終戦前日の2月15日、アウェー戦で岡山に大敗したチームは、POへ首の皮一枚を残す苦しい状況だった。張一博監督に最終戦への意気込みを聞こうと携帯電話を4度鳴らしたが、取ってもらえなかった。

 同行の球団職員に電話し、監督に取材したい旨を告げた。岡山県から埼玉県に移動中らしく、新幹線の駅のアナウンス音が響く。職員は困ったような雰囲気だったが「要望は伝える」と約束してくれた。だがタイミングが悪いのか、ほかに理由があるのか、やはり電話はつながらなかった。

■ダブルス落とす

 結局、最終戦当日の紙面に監督の談話は載せられなかった。16日は朝からマラソンやハンドボールを取材。急いでパソコンを開き、アスティーダ-彩たま戦の生中継を見ると第1マッチのダブルスを落としていた。「POは厳しいかな」と正直思った。

 Tリーグはダブルス1試合、シングルス3試合の1複3単で戦い、3マッチを先取した方が勝つ。アスティーダは彩たまに今季、この試合まで1勝5敗と苦手にしていた。特にシングルスは6勝14敗と分が悪く、主将の吉村真晴が言うように「彩たまに勝つにはダブルスで勝利することがマスト」と考えていた。

 第1単の荘智淵も敗北し、後がなくなったアスティーダは世界ランキング240位の有延大夢が同23位の相手と対戦した。格だけで見ると勝利、そしてPO進出は絶望的な状況だった。

 だが有延は粘る。マッチポイントを許しながらも、サーブを武器に相手レシーブから得点を重ねて勝利した。勢いづいたチームは第3単の吉村も勝ち、試合を五分に戻した。

 騒ぎ出す私につられて同僚もパソコン画面をのぞきに来る。そしてビクトリーマッチを荘が制して2位が確定し、PO進出を手にした。0-2から3連勝という大逆転劇は、ファンの間では「今季のベストゲーム」とたたえられている。

■新幹線での会議

 この試合、小笠原大介東京通信員が会場で取材していた。彼の記事中に、逆転の口火を切った有延は「岡山から東京に移動する新幹線の車中で起用を告げられた」とあった。これで合点がいった。張監督は苦手な彩たま戦のオーダーに悩み、取材に応じる余裕がなかったのだろうと。電話がつながらない時は焦ったが、PO進出という結果につながったことは素直にうれしかった。

 POは3月14日、東京・両国国技館での一発勝負。私が出張し取材する予定だったが新型コロナウイルスの影響で中止となり、4月1日には人事異動で運動部を離れた。

 アスティーダは19~20季の所属選手のほぼ全員が契約更新し、さらに1月の全日本選手権でシングルス王者となった宇田幸矢などの有望選手も獲得して戦力に厚みが増した。2位躍進におごらず、チーム内競争で高め合って新シーズンも勝ち抜いてほしい。そして一ファンとしてPOを観戦したい。(又吉健次)=肩書などは当時。敬称略(随時掲載)

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