琉球料理研究家の渡口初美さん(85)が、動画投稿サイト「ユーチューブ」に料理動画を投稿している。5月にイラブー(ウミヘビ)汁から始め、既に20品近くを撮影した。新型コロナウイルスで暗くなりがちな世の中を案じ、「ひと騒ぎしなくちゃ」とデビューを決めた。収録は毎週金曜日。「私はミイラになるまでずっと続けますよ。問題は、この人たちがついてこられるかだね」と撮影クルーに冗談を飛ばす。(中部報道部・平島夏実)

イラブー汁を作る渡口初美さん(動画投稿サイト「ユーチューブ」から)

 渡口さんは那覇市出身で、10人きょうだいの長女。母シズさんが戦後始めたサーターアンダギー屋を手伝ううち、料理の楽しさを知った。

 動画では昔ながらの琉球料理を取り上げるが、計量カップや大さじ・小さじは使わず、全て目分量。「料理は遊びと思ったらいいですよ。調味料を入れすぎた時の調整の仕方が分かれば大丈夫。おいしければ、どれも正しいです」と料理初心者の心を解きほぐす。

 これまで県内各地を回って聞いた「食の知恵」は、惜しまず織り交ぜる。イナムドゥチの材料を赤みそで煮込むのは、祖父が琉球王府のコックさんだったという「グーシのおばあさん」の勧め。皮をむいた大根でタコをたたいて柔らかくするのは、約30年前に恩納村で出会った漁師の勧め。市辻の料亭から栄町の飲み屋に移った「おかあさんたち」の教えもある。

 撮影では、渡口家の食卓の記憶が話題に出ることも多い。ある回で触れたのは「お父さんのワカシムン」。昔は一家の大黒柱をねぎらうため、家族とは別に1品多く準備したという。「今は、お父さんが大変かわいそうな時代になりました」。説明する渡口さんの口調に哀愁が漂う。

 一方で、仕上がった料理に「うわー。誰にもあげたくない!」と声を弾ませる回も。定番のゴーヤーチャンプルーの撮影では、初物のシークヮーサーを薄切りにして鍋に入れ「種も柔らかいから結構いけますよ。はい、新しい挑戦でございます」と元気よく締めた。

 今後ユーチューブの広告収入が入れば、親族を世界一周旅行に連れて行くという渡口さん。「まあ、私はおうちにいるのが一番好きですけどね。夢がないと風邪ひくんだよ」と笑う。動画チャンネルは「渡口初美の琉球民俗家庭料理」。