社説

社説[混迷深める1強政治]安倍政権は自浄力失った

2020年6月20日 08:50

 「法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております」

 前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が、公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕されたことに対し、安倍晋三首相はそうコメントした。

 首相の口からもう何回、この言葉を聞いたことだろう。 事あるごとに「最終的な責任は私にある」と言うが、国民が納得できるような形で責任を取ったためしがない。

 昨年10月、菅原一秀前経産相と河井前法相が政治とカネを巡る問題で立て続けに閣僚を辞任した。内閣改造の翌月のことだ。

 内閣府副大臣だった秋元司衆院議員がカジノを含む統合型リゾート事業を巡る収賄容疑で逮捕されたのは昨年末のことである。

 不祥事のたびに「任命責任は私にある」と首相は決まり文句を言う。まるで、それを口にするだけで責任が果たされたかのようである。

 だが、自らリーダーシップを発揮して国民の疑問に真摯(しんし)に答える姿勢を示さなければ、その言葉は無意味な常套句(じょうとうく)になってしまう。

 昨年、「桜を見る会」を巡って数々の疑惑が表面化し、安倍首相側の公私混同ぶりが白日の下にさらされた。招待者名簿の扱いを巡る公文書管理法違反の事例も明らかになっている。

 表面化した疑惑が解明されないまま、次々に新たなスキャンダルが噴き出す-それが今の日本政治の姿である。政治・行政の劣化が進み、その影響が各面に広がっている。

■    ■

 安倍政権の特徴は、「どのように政策が決まったのか」という政策決定過程が極めて不透明なことである。

 議事録を作成しない。情報公開を渋る。説明責任を十分に果たさない。

 官僚は官邸の顔色をうかがいながら仕事をしているため、矜持(きょうじ)が失われ、モラルまで壊れつつある。

 地上配備のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を巡って防衛省は、あれほど必要性を強調していたにもかかわらず、突然、計画の停止を発表した。

 新型コロナウイルス対策についても、混乱が目立つ。2020年度第2次補正予算に10兆円もの予備費が計上されたことは事実上の白紙委任を意味する。

 責任を取らない政治と、官邸の意向を過剰に忖度(そんたく)する官僚。官邸に気兼ねしてチェック機能を発揮できない自民党と力不足の野党。この状況を抜本的に変えなければ日本の政治に未来はない。

■    ■

 コロナ禍を契機に、世論にも自民党にも変化の兆しが見え始めたのは確かだ。

 コロナ対策を巡って、自民党の中から、官邸主導の政策を改めさせる動きが表面化した。10万円給付はそうやって実現したものだ。

 検察庁法改正案の審議を強行する政府・自民党に対し、抗議の声を上げ、取り下げさせたのはネット世論だった。

 権力は長く続くと腐る。安倍1強体制のおごりと暴走を改めさせ、民主政治の健全性を取り戻す、今が最大のチャンスである。

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