新基地建設に伴う名護市辺野古沖のサンゴ移植を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(委員長・富越和厚元東京高裁長官)は、江藤拓農林水産相が行った県への是正指示について「違法ではない」との判断を示し、県の主張を退けた。

 県は係争委の結論を不服としており、辺野古新基地建設に関連し、国と9度目の訴訟に発展する可能性が高い。

 サンゴ移植を巡る問題は防衛省沖縄防衛局が昨年、特別採捕許可を申請。移植の対象になっているサンゴ類は約4万群体に上る。

 農相は今年2月、「許可するよう」県に是正を指示した。許可を求める指示に県は「結論ありきで知事権限へ不当に関与している疑念がある」として従わず、係争委に審査を申し立てていた。

 富越委員長は会見で「県の標準処理期間(45日間)を大幅に過ぎても許可するかどうか判断せず、迅速とは認めがたい」として是正指示は「違法ではない」と結論付けた。

 本当にそうだろうか。

 総務省は国会で「標準処理期間を経過して処分が出ていないことのみをもって違法に当たることにはならない」との見解を示している。

 農相が防衛局と一体となって県に許可を迫る是正指示は「異常事態」(玉城デニー知事)である。国と地方が対等の中、国の関与の最小限度の原則、自治体の自主性や自立性への配慮など地方自治法の原則から逸脱している。

 富越委員長は「国の関与の最小限度まで論点がいっていない」と認めている。不十分な審査と言わざるを得ない。

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 大浦湾に広がる軟弱地盤の存在が明らかになり、防衛局は4月に改良工事に伴う設計概要の変更承認申請書を提出した。県は農相が是正指示を出した時点では設計変更を申請しておらず、事業の実現性の観点から厳格に審査する必要があり、時間を要するとしていた。これに対し係争委は是正指示の時点で判断できたと県の主張を一蹴した。乱暴というほかない審査だ。

 改良工事は約7万本の杭(くい)を打ち込む大規模なもので環境への影響は甚大だ。最深部分が海面から約90メートルに達する地点にもマヨネーズ並みの軟弱地盤がある。世界的な難工事になるのは間違いない。与党からも大幅に膨らむ工期と工費への疑義が出ている。

 農相が是正指示を出した時とは、新基地建設は実現可能性に疑問符が付くほど大きく変容しているのである。

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 そもそもサンゴ移植が有効な手段なのかも問題だ。

 水産庁が2019年にまとめた手引きで「サンゴ増殖技術検討委員会」の委員長を務めた有識者は、沖縄で移植あるいは移設されたサンゴ群体は30万株を超えるが、4年後の生残率は20%以下である、などと記している。移植によるサンゴの生存率が低いことを認めているのだ。農相の是正指示によるサンゴ保全に根拠はないのである。

 係争委の判断は地方自治の精神を蔑(ないがし)ろにするだけでなく、軟弱地盤の地盤改良工事やサンゴ移植の生存率を無視した不当極まりない決定だ。