沖縄タイムス社と朝日新聞社が実施した沖縄戦体験者アンケートで、沖縄戦の体験が次世代に「あまり伝わっていない」「まったく伝わっていない」と答えた人が全回答者216人の62・5%(135人)を占めた。「ある程度伝わっている」は25%、「大いに伝わっている」は7・4%にとどまった。戦後75年の今年、沖縄戦体験の風化を懸念する体験者の声が明らかになった。

 なぜ伝わっていないと思うのか。回答者の1人は、「体験しなければ、沖縄戦の、あの悲惨な状況を正確に知ることは難しい」と話した。住民に銃を向ける日本兵、泣くわが子の口をふさいだ母親、連綿と続く死体の上を歩いた記憶-。今、それらを想像することは容易でない。

 一方で、沖縄戦体験者は今も鮮明な記憶を持つ。思い出す頻度について回答者の計76・8%が「よくある」「ときどきある」と答えた。「あまりない」「まったくない」の合計18・9%の4倍にあたる。

 こうした自身の戦争体験を子や孫に話した経験については「大いに話している」が31・2%で最多だった。他方「ある程度話している」29・6%と「あまり話していない」28・8%が並び、体験を語ることに躊躇(ちゅうちょ)する様子もうかがえた。「まったく話していない」も10・4%いた。

 躊躇する理由として回答者からは「戦争体験を話すことで家族を不安にさせたくない」「話すことで戦争を思い出すことがつらい」などの意見が挙がる。生々しく残る記憶が今も戦争体験者を傷つけ、苦しめている。

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 沖縄戦の実情が本土にどの程度伝わっているかについては「あまり伝わっていない」とした人が最多の56・9%だった。「まったく伝わっていない」17・4%と合計すると全回答者の74・3%が、本土側との認識の違いを感じている。

 戦前の皇民化教育は、防衛隊や学徒隊、護郷隊の編成など軍と住民の一体化につながったほか、軍用飛行場建設のため戦時中は土地の多くが強制接収された。人や土地すべてが巻き込まれた沖縄戦の教訓について、回答者は「軍隊は住民を守らない」「基地があるから戦場になる」とのメッセージを寄せている。

 名護市辺野古の新基地建設については回答者の69・4%が「反対」としており、「賛成」6%と「どちらでもない」19・9%を引き離した。沖縄戦の教訓が新基地建設反対につながっている。

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 アンケートは、数年前取材などに応じたことのある677人に電話調査を実施。うち26人が死去、71人が体調不良や入院などで回答できなかった。追跡取材では、電話に出ず「不在」とされた中にも亡くなっていた人がいたことも分かった。沖縄戦体験者は確実に減少している。

 そうした体験者の58・8%が沖縄が再び戦場となる可能性について「大いにある」「ある程度ある」と答えた。私たち戦後世代は、体験者たちの警告を真摯(しんし)に受け止めなければならない。