7日に投開票された県議選の立候補者(落選)が選挙2日後に傷害容疑で逮捕された。事件は1カ月余り前の5月3日に発生。複数の捜査関係者によると、発生から数日後には容疑が固まり、逮捕の用意はあったが、県警の上層部から選挙を理由に「待った」がかかった。こうした先送りの判断は珍しくなく、捜査当局の間で「不文律」が存在する。県警幹部や複数のOBが事情を明かす。

(資料写真)沖縄県警

 選挙期間中またはその直前に、立候補者に容疑があった場合、万一の誤認逮捕や無罪判決が出たリスクも考慮し、立件を選挙終了まで先送りにする慣例がある。警察組織内で暗黙の了解があるとされる。

 幹部OBは「選挙前に逮捕すれば、立候補するのは厳しくなる。仮に誤認逮捕となれば、取り返しがつかず、国家賠償が生じる事態になりかねない」と語る。ただ、現行犯や凶悪犯罪の場合は選挙の有無に関係なく逮捕するため、全ての犯罪に及ぶわけではない。

 逮捕によって選挙戦の構図が大きく変わる可能性もあり、「容疑者の証拠隠滅の恐れと、逮捕による影響を比較検討しながら、判断は慎重にならざるを得ない」(幹部OB)。

 こうした立件の可否や時期を巡る判断はケース・バイ・ケースで、その後の法的リスクを負う。そのため、通常であれば管轄署レベルで処理する事案でも県警本部長や、場合によっては警察庁に伺いを立てるのが“鉄則”となっている。

 一方、名護署は今回の立候補者の逮捕について「県議選とは関係ない」との見解を示している。(社会部・城間陽介、比嘉太一)

「慎重に扱われるべきだ」

■中野正剛教授(沖国大 刑事訴訟法)の話

 市民の代表を選ぶ選挙で、立候補者の素行を有権者が知ることは重要だ。公選法によれば、警察の嫌疑を受けただけでは被選挙権を喪失しないが、有権者がそれを知った場合、その人物への投票を控えることもあるだろう。

 警察は逮捕権という強大な権力を持つ。特に県政の一翼を担わんとする選挙絡みの立件は、対立候補者側の肩を持つことになりかねず、市民に直接選ばれていない警察は控えめにならざるを得ない。志布志事件(2003年の鹿児島県議選の選挙違反事件)のように冤(えん)罪(ざい)となったケースもあり、当局の捜査に「絶対」はない。

 選挙は公正でなくてはならないが、警察の逮捕権行使は「公正さ」を担保するためにも慎重に扱われるべきだ。その意味で警察の立件先送りの「不文律」はある程度、理解されるべきものと考える。同時に有権者の知る権利を確保するためにも、警察の判断とは別に、マスコミ独自の取材と報道の在り方も検討されるべきだろう。(談)