今一番したいことは濃厚接触。誰かと3密の空間に身を置き、言葉を交わし、笑い、泣き、飛沫を排出しまくりたい。それが許されぬ世ならば、忘れるしかない。飛沫感染も「テイクアウト不倫」も一人の夜も全て、忘れさせてください。それなら映画を見るといいよ。

鴛鴦歌合戦

 始まる前は「家鍵かけてきたっけ」「お昼何食べたっけ」「私は今トイレに行きたいのだろうか」-。などと思考に忙しいが、始まってしまえば別世界。ここではないどこかで他人の人生を生き、人を愛し、愛される。一生懸命に。

 さて、ここで問題です。どの映画を見ればいいのでしょうか。そう、映画選びは重要。元来わたしは「映画は気楽に選ぼうぜ。失敗から学ぶ。それもまた一興」派だった。でも間違っていた。(それに若かった)

 映画は全身全霊で選ばねばならぬ。費やすのは時間とお金だけじゃない。心だ。砕けてしまいそうな我が心を費やすのだ。つまらなければ砕けてしまう。そんなリスクを冒す価値があるのかって?

 ある! 時に映画は濃厚接触に勝る喜びを与え、絶望さえも忘却の彼方に葬りさるのだから。しからば、我「鴛鴦(おしどり)歌合戦」を選ぼう。理由はこの映画を見るために費やした時間全てを愛おしく思えるほど、優しく温かい映画だったからだ。(桜坂劇場・下地久美子)

ミュージックタウン音市場で7月3日から。