先日、訪ねた宜野湾市の佐喜眞美術館は新型コロナウイルスの影響でがらんとしていた。例年は修学旅行生でごった返す日もあるというが、家族連れが数組いるくらい

▼学校関係などの団体客だけでこの4カ月間で約6千人のキャンセルがあった。それでも、長年にわたって毎年来館する学校は秋以降や来年度に延期すると約束してくれたと館長の佐喜眞道夫さん(74)は話す

▼沖縄の地上戦が凝縮された故丸木位里・俊夫妻による「沖縄戦の図」の常設展示で知られ、平和学習の場としても定着する。昨年11月には開館25周年を迎え、来館者は延べ100万人に上る

▼その6、7割が県外からの修学旅行生といい、「地上戦を知らない日本の若者たちに見てもらえたのは一つの大きな仕事だ」と自負する

▼懸念するのは県民の戦争の記憶の薄らぎ。読谷村のチビチリガマを少年らが荒らした事件や、コロナ禍といえども沖縄全戦没者追悼式を国立戦没者墓苑で開催しようとした県幹部の発想に危機感を抱く。「地元の人にも丸木夫妻の作品を見て感じてほしい」

▼追悼式の「平和の詩」で首里高校3年の高良朱香音(あかね)さんが読み上げた、戦争を生き抜いた「あなた」への「ありがとう」の言葉が胸に残る。週末は戻り梅雨の空模様。館内で静かに命と平和について考えてみるのもいい。(石川亮太)