社説

社説[コロナと外国人]支援の「壁」なぜつくる

2020年7月2日 07:12

 新型コロナウイルスによる経済危機が、弱い立場にある外国人労働者や留学生を直撃している。

 休業や減収で生活が苦しくなった人を支える「緊急小口資金」など国の特例貸し付けに、県内に住む外国人の申請が殺到しているという。

 窓口となる那覇市社会福祉協議会によると、一時金として20万円まで無利子で借りられる緊急小口資金は、申請の15%に当たる898件を外国人が占めている。窓口を訪れる人の半数近くが留学生という日もあったとする。 

 県内で働く外国人労働者は昨年10月時点で1万人余。産業別では宿泊・飲食サービス業が多く、コロナによる雇用情勢悪化のしわ寄せをもろに受ける。

 日本語がうまく話せないため、支援者と窓口を訪れるケースもある。それでも申請できればいいが、中には情報さえ届かず支援にたどりつけない人もいるのではないか。

 さらに今回浮かび上がったのは、住民票がないなどの理由で貸し付け対象外となる課題だ。コロナで仕事を失い、就労ビザの期限切れで住民基本台帳の登録から外れた人がいるという。実際は沖縄で長く暮らしているのに、仕事の終了で短期の在留期間となったため、国内に住む全ての人に配るという10万円の一律給付も受けられないでいる。

 昨年6月末の法務省統計で、3カ月以下の短期滞在など住民基本台帳に記録のない正規滞在の外国人が約63万人に上る。それ以外にも8万人ほどの非正規滞在外国人がいるとされる。

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 コロナの影響でアルバイト収入が激減し、学業を続けるのが困難な学生に10万~20万円を給付する支援策を巡っても差別的扱いが問題となっている。

 文部科学省が外国人留学生にだけ「成績上位3割」程度を対象とする要件を設けたからだ。

 日本人学生にはない成績という物差しは明らかに公平さを欠いている。困っている時だからこその支援であり、成績要件は撤回すべきである。

 思い出すのは、2008年のリーマン・ショックで多くの日系人が職を失ったことだ。ブラジル人だけでも10万人以上が帰国したとされ、雇用の調整弁にしているとの批判を受けた。

 外国人労働者や留学生を増やす政策を取りながら、都合が悪くなると切り捨てる。今回もそんな「冷たい」印象を与えかねない。

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 改正入管難民法議論の中で盛んに引用されたのがスイスの作家、マックス・フリッシュのこの言葉だ。「われわれは労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」

 安倍政権にはあらためて外国人労働者をどう見ているのか問いたい。

 困窮する外国人に手を差し伸べようと草の根レベルで支援金を送ったり、弁当を配るなどの動きが広がっている。

 広がる善意は歓迎するが、多文化共生社会の実現に向けて重要なのは、全ての労働者の権利の保障である。

 公的責任において支援を届けるべきだ。

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