昨秋のラグビーW杯で「にわかファン」なる言葉がはやった。ルールを知らない人も日本の快進撃に沸いた。この夏は、にわかに将棋にはまっている人が多いのでは▼17歳の高校生棋士、藤井聡太七段の勢いが止まらない。棋聖戦で渡辺明三冠(36)に連勝して王手をかけ、木村一基王位(47)に挑む王位戦でも先勝した。タイトルを取れば史上最年少記録▼「ボクシングに例えると、やりたいパンチを全て打ち込んだ感がある」(深浦康市九段)と評された王位開幕戦。かたや157手の熱戦となった棋聖第1局では、終盤の連続王手をかわしきった。攻めて良し守って良し。「矢倉」「角換わり」と戦型を一つ二つと学んでいる当方にもすごみが伝わる▼興味を引かれるのは、藤井七段の強さだけではない。木村王位は7度目の挑戦にして46歳で初タイトルを取った苦労人。座右の銘が、何度失敗しても諦めないことを意味する「百折不撓(ひゃくせつふとう)」と聞けば同世代として応援したくなる▼谷川浩司九段は、常識外の一手に最善手を見つけるのが将棋の醍醐味(だいごみ)と説く。「常識や本筋の分からない人はプロにはなれない。本筋しか指せない人は一流にはなれない」と著書に記す▼W杯のキャッチコピー同様、「一生に一度」の対局。トップ棋士が全てをかけて指す一手とは。にわかファンながら胸が躍る。(大門雅子)