[リポート’20 石垣発]

大雨で道路が冠水し、排水溝から水が溢れだした市街地=6月8日、石垣市

 5、6月の梅雨の時期に石垣島地方で観測史上最大を更新する記録的な大雨が相次ぎ、自治体の防災対策が新たな課題を突き付けられている。石垣市登野城で5月、126・0ミリの1時間降水量が観測されると、6月には24時間降水量が416・0ミリを記録。7月3~4日に甚大な被害が出た熊本県人吉市の410・5ミリを超える雨量となった。石垣島では人命への被害は無かったが、市の防災担当者は「事前に正確な雨量が読めず市民への周知が難しい」「台風と違って対応が難しい」と内情を吐露する。(八重山支局・粟国祥輔)

 沖縄地方が梅雨入りした翌日の5月12日、市と竹富町では未明から朝にかけて猛烈な雨が降った。気象台は午前7時26分に大雨と洪水警報を発令。午前7時2分までの1時間降水量は126・0ミリで、1896年の観測以来最多となった。同22日にも非常に激しい雨が降り、西表島では23日にかけての48時間雨量が222・5ミリで5月の観測最大を記録した。

 6月8日にも未明から夕方にかけて猛烈な雨となり、気象台は午前10時51分に各警報に続いて「石垣島では50年に1度の記録的な大雨になっているところがある」と発表した。1~72時間ごとに観測する7項目の降水量の値が全て同地点の6月最高を更新し、このうち6、12時間の値はそれぞれ288・5ミリ、353・0ミリで1977年の観測以来最大。24時間の416・0ミリは1900年の統計開始から最多を記録した。

■相次いだ被害

 いずれのケースも市街地の道路を中心に最大9カ所で冠水し、警察が状況に応じて交通規制。家屋の床上・床下浸水被害も10軒前後相次いだ。郊外では屋良部と野底の林道2カ所で土砂崩れが起き、轟川が一部氾濫した。市や消防によると、車両の水没などで10人超が救助された。市民の通勤・通学にも影響が出た。

 石垣島地方気象台は、当時は梅雨前線に太平洋高気圧が張り出している状況で、暖かく水蒸気量の多い空気が流れ込みやすく結果として大雨になったと説明した。

 梅雨に当たる5月11~6月11日の石垣島の降水量(速報値)は平年比369%の972ミリで、「かなり多い降水の年だった」と指摘。記録的な大雨が相次いだ要因については「降水量は年によって増減しており、現時点では何とも言い難い」と話した。

■発令の難しさ

 市防災危機管理室では今回、無料通信アプリ「LINE(ライン)」やメール、防災無線などを通して市民に警戒を呼び掛けた。市役所内の各部署が地域防災計画などに沿って持ち場の巡回や、避難所開設について検討。防災担当職員は内外の情報を収集しながら警察や消防と調整し、必要な情報発信に努めた。

 気象台とも連携を密にし、前日の時点で警報級の雨になる可能性があるとの情報を得ていた。ただ「警報を出すタイミングまでは当の気象台でも難しい」と防災職員。警報を待って周知するべきかどうか悩んだと話す。市消防の担当者は「明るい時間帯の雨だったので被害が抑えられた面もある。畑が心配で暗くても見に行く農家もいる。今後の課題だ」と指摘した。

 市防災危機管理室の大濵武室長は「かつてないほどの豪雨が頻繁に起きている。何か起きてからでは遅い。空振りになることを恐れず危険を市民に知らせることが何より大事だ」と強調している。