社説

社説[米軍基地でクラスター]水際対策の抜け道防げ

2020年7月9日 08:33

 ウイルスはフェンスを難なく乗り越える。水際対策に抜け穴があってはならない。

 米軍普天間飛行場で同じ部署に勤務する5人の軍属が新型コロナウイルスに感染した。在沖米軍基地で「クラスター(集団感染)」が発生した初めてのケースである。感染経路は不明としている。 

 基地内に住んでいるのか、いないのか、どのような職種についているのか。任務によっては毎日のように別の基地へも出入りする。

 県内の米軍基地で働く日本人従業員は9千人近い。従業員は、軍関係者と同じフードコートやジム、トイレなどを使用する。感染のリスクはないのか。

 県に軍属が感染したとの連絡があった7日、米軍は具体的な説明なしに、従業員を長時間基地内に留め置いた。従業員だけでなく、周辺住民にも不安が広がった。

 さらに県民が心配するのは、基地の外での感染者の行動が分かっていない点だ。

 在日米海兵隊は6月中旬、コロナに伴う警戒レベルを示す健康保護態勢(HPCON)を、5段階で3番目の「ブラボー」に引き下げた。海兵隊はモノレール、バスの乗車は許可していないが、基地外のレストランでの飲食など、これまでの活動の規制が大幅に緩和された。

 米軍基地から民間地域へウイルスが持ち込まれる懸念が拭えない。

 日本政府や県は、米軍に対して、5人の基地内外での行動履歴を聞き取るなど徹底的な調査を求め、県民に知らせてもらいたい。

■    ■

 県内では、3月下旬に嘉手納基地で2人の兵士と家族1人の感染が確認された。今月2日にもうるま市のキャンプ・マクトリアスの海兵隊員の家族1人の感染が判明。普天間の5人と合わせ米軍関係者の感染者は計9人となった。

 新型コロナウイルスの感染者は8日現在、世界で1182万人、うち299万人が米国だ。米軍関係者の総数は3万人を超え死者も40人に上る。県民の日常生活の隣に「感染大国」があるといってよい。

 だが、米軍関係者は日米地位協定によって、基地を通じて入国する際には、検疫について、定めがない。

 政府は米国を入国制限対象に指定するが、基地内は権限が及ばない。クラスターの感染経路解明のため米軍の協力と情報提供がなければ、感染防止策は実効性に乏しい。県民の命に直接関わる問題だ。日本側の疫学調査も含め米側は積極的に協力すべきだ。

■    ■

 日米両政府は2013年の合同委員会で、感染症が基地内で発生した場合、米軍が通報することで合意している。今回県に連絡があった際、米軍は当初「複数人」としか知らせなかった。行動履歴や濃厚接触者の数などの報告は、いまだにない。

 政府は新設した感染症対策分科会で、水際対策の徹底を対策の柱とする考えを示している。

 最終的には日米地位協定の改正が必要だが、政府は日米合意による情報開示の徹底を米側に強く求めるべきだ。


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