ファーウェイに流出? データも人材も奪う“荒技”

 同記事では、これらのデータが中国のどこに流れたのかは明確には分かっていないというが、一方でこう指摘する。「この件の調査を行った多くの人たちが、大手通信機器会社の華為技術(ファーウェイ)など中国のテクノロジー企業を後押しするために、鍵となる欧米企業を弱体化させてきた中国政府の関与を強く疑っている」

 ファーウェイ側はこの疑惑を否定している。ちなみに中国政府とファーウェイの関係はよく知られており、政府はファーウェイに750億ドルの支援を与えてきたとされ、さらに融資の上限も1000億ドルに設定していると米情報機関は分析している。米政府がファーウェイに対し、中国政府の支援金を元手に不当に製品の価値を下げて不正競争をしていると怒るのはこうした背景があるからだ。さらにノーテル社の一件のように、国外企業から盗んできた知的財産も、ファーウェイが手に入れていたと見られている。

盗まれたデータはファーウェイなどの中国企業支援に使われていたと見られている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 これまでの筆者の取材では、おそらくノーテル社へのサイバー攻撃を担当したのは、当時、北米地域を担当していた人民解放軍総参謀部の第3部2局だったはずだ。後にこの部署に属する「61398部隊」は、北米企業に対してサイバースパイ工作活動を繰り広げていたとして、メンバーの一部はFBIから指名手配を受けた。顔も名前も全て、今もネット上にさらされている。

 ノーテル社のケースでは、攻撃は同社が倒産する09年まで続いた。倒産間際、ファーウェイ側は自分たちが弱体化させたノーテル社に対して、買収や支援を持ちかける協議もしている。相手を弱らせて、救世主であるかのように助けるのである。

 さらにファーウェイは、倒産までにノーテル社で5Gの技術開発をしていた20人を引き抜いている。記事はこう書いている。「ノーテル社で最も功績を残した開発者だったウェン・トンは現在、ファーウェイのワイヤレス事業で最高技術責任者となっている。トンは09年、14年間勤めたノーテル社から、ファーウェイに同僚たちと引き抜かれている」

 こうした荒技で、ファーウェイは現在の5G技術を世界でリードする企業になったと言っても過言ではないだろう。