コロナ禍で弱った日本企業が狙われている

 実際のところ、すでに工作は始まっているかもしれない。自民党の甘利明税制調査会長は6月、「新型コロナウイルス禍で体力が劣る企業を傘下に入れるよう中国で檄が飛んでいる」と語っている。対日工作が始まっているということだろう。また甘利氏は「安全保障上の重要技術の保有企業に影響力を持とうとする外資の買収などを防ぐ」とも述べている。

 日本も狙われていることは間違いない。買収などを進める前に、まずはノーテル社のケースのように、サイバー攻撃で内部情報を探ったりして、会社を弱らせるという工作はすでに方々で行われていても何ら不思議ではない。

 さらに、人材も狙われていることを忘れてはいけない。例えば今、中国は米国から取引禁止措置を受けて、安定して手に入れられなくなりつつある半導体分野の人材確保に力を入れている。そういう分野は最も注意が必要だ。

 相手がどんなものを欲しているのかを知れば、防御はしやすくなる。日本企業には、ぜひノーテル社のような事例を参考にしていただき、教訓から学んでもらいたいと願う。

筆者プロフィール:山田敏弘 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。

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