社説

社説[米軍 ホテル借り上げ]基地内隔離なぜできぬ

2020年7月11日 07:58

 在沖米海兵隊が、新型コロナウイルス対策として北谷町内のホテルを借り上げ、県内への人事異動者らを対象にした隔離措置を始めた。対象者は14日間、原則客室内で過ごすという。

 だが、県内に広大な施設を持つ米軍が、隔離のためとして基地の外のホテルを借り上げた理由は十分納得のいくものではない。基地内で隔離するには手狭なためというが、対象者数など詳細が明らかでなく、民間地を使う必然性が不明だからだ。

 しかも、県を通じて地元北谷町に「7月からホテルを使用する」との連絡があったのは6月30日だ。これでは住民への周知もままならない。説明がないまま、地元は不安に包まれている。

 軍隊は集団で行動し、狭い兵舎や軍艦の中で長期間生活するため、感染症が拡大しやすい環境にある。米海兵隊が6月、オーストラリアへのローテーション配備を再開した際は、同国の政策に従い、提供施設内で14日間の隔離と検査を実施。感染がないことを確認した上で初めて訓練に入った。

 米軍が今回、地域への事前説明や十分な理解を得ることなく民間ホテルでの隔離を始めたのは、住民からすれば、「感染リスクを基地内から民間地に転嫁した」と受け取っても仕方ない乱暴な措置だ。

 北谷町の野国昌春町長は7月10日、沖縄防衛局に赴き、この件で2度目の抗議と詳細な情報提供を求めた。しかし新たな情報は得られなかったという。

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 そもそも米国は、新型コロナ患者が300万人を超える世界最大の感染国だ。一部の州では、一度緩和した外出規制を再び強化し始めているが、感染拡大に歯止めがかからない。

 日本は米国からの入国は原則拒否しているが、米軍基地を経由した入国は自由で検疫も米側に委ねられている。感染持ち込みのリスクは高いと言わざるを得ない。

 事実、キャンプ・ハンセンでは9日に3人程度、10日は7~8人の感染が新たに確認された。一方、県が10日発表した県内感染者は、埼玉県在住の男性1人だった。

 基地内感染の急拡大で、在沖米海兵隊は同日、コロナへの警戒レベルを示す健康保護態勢(HPCON)を、5段階中2番目に高い「市中感染の継続」状態に引き上げた。6月中旬解禁されたばかりの米兵らの基地の外での飲食は再び禁止された。

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 米軍人らが国内外を自由に移動できる以上、米軍自らが行う隔離や行動制限は、県内へのウイルス持ち込みを防ぐ上では不可欠だ。一方で北谷町の抗議を受けようやく今月2日に町へ内容を説明した国の対応は解せない。米国が入国拒否対象なら、ホテルに宿泊する米軍人らも本来民間地域にいてはならないはずだ。自らが示した感染対策と矛盾する現状をどう考えるのか。

 県は早急に、米軍や国に対し、町も交えた協議の場を設置し、情報公開を徹底するよう求めるべきだ。公衆衛生に関わる内容が不明のままでは感染リスクは解消できない。


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