小学生の頃だった。やんばるの祖父母宅に向かう道中、フロントガラスの向こうに突然現れたコバルトブルーの海に思わず歓声を上げたことがある。乗っていたタクシーの運転手はすかさず「沖縄の海にはバスクリンが入っている」とうれしそうだった

▼そして今、名護で海と隣り合わせの暮らしを味わっている。身近に朝夕の散歩が楽しめる海岸線。空がさんさんと輝いている。観光客を横目に、得意げだったあのタクシー運転手の気持ちが重なってくる

▼魅力ある土地は、自然の風景や街並み、そして人との触れ合い、食や文化が相まっている。いい思い出は相乗効果になるし、残念な思い出は時にすべてを相殺してしまう

▼名護から本部へと続く国道449号線。美ら海水族館に向かってバスクリンの海が迎えてくれるが、塩川の手前から辺野古に土砂を運ぶ運搬船が群をなしている。リゾートにはとても似つかわしくない物々しい風景

▼その塩川は、海水とほぼ同じ塩水が湧き出る世界でもまれな国の天然記念物だ。ところが道沿いの説明板ははげ落ち、周囲は草木が覆う。ここ数年は雨の翌日に水が赤茶けて濁るという

▼世界に誇る海、空、自然、文化。日常の中でややもすれば当たり前になってしまう。生かすも殺すも、私たちの手にかかっている。(粟国雄一郎)