在沖米軍基地で、米軍関係者45人が新型コロナウイルスに新たに感染していたことが分かった。7日以降10日までに判明した分を含めると、普天間飛行場で38人、キャンプ・ハンセンで23人の感染が確認された。県が発表した。
玉城デニー知事は在沖米軍トップへ「衝撃を受けた。極めて遺憾」と伝え、普天間飛行場とキャンプ・ハンセンの閉鎖や、米本国から沖縄への移動中止などを求めた。
基地のロックダウンは当然だ。ただ、それだけでは県民の不安は解消されない。
県民の命にかかわる問題にもかかわらず、この間、米軍から必要な情報が示されないのは異常とも言える。しかも公表を避ける合理的な理由の説明もない。
県内の米軍基地内では多くの日本人が従業員として働く。感染者や濃厚接触者が基地の外に出て、飲食や買い物をしていた可能性もある。
米軍は感染者の所属や基地外での行動歴、症状の有無や有症者の程度、住居は基地内か民間地か、濃厚接触者の人数、どのような感染防止策を講じてきたのか、基地内の医療機関で対応可能なのかも示してもらいたい。
県も、得られた情報を全て明らかにすべきだ。「米軍の意向に反して公表すれば情報がもらえなくなる可能性がある」との理由で、この数日、感染者数を明らかにしなかった。
感染拡大を防ぐには沖縄と米軍の関係機関が情報を共有し、それぞれの役割を担う必要がある。その役割の中には地元の不安解消も含まれる。
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県議会は10日、感染防止対策の徹底や情報開示などを求める意見書と決議を全会一致で可決した。通常は所管の委員会に付託して審査するが、今回は各派代表者の合意をもって本会議へ臨む異例の過程をたどった。
在沖米軍基地では、これまでも感染が確認されている。3月下旬に嘉手納基地で兵士2人と家族1人、今月2日には、うるま市のキャンプ・マクトリアスの海兵隊員家族1人の感染が判明した。続いて今回の普天間とキャンプ・ハンセンでの感染だ。
北谷町の民間ホテルを海兵隊が借り上げ、異動者らの隔離措置に使用していることも分かった。
いずれも県民は十分な情報を得ていない。米軍にその提供を強く求めていない日本政府に対しても県民の不信は高まっており、県議会のスピード可決は双方への意思表示でもある。
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東京では3日連続して新規感染者が200人を超えた。菅義偉官房長官は北海道での講演で「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と述べた。
しかし、沖縄では極めて「基地問題」だ。必要な情報が届けられず米軍基地がブラックボックス化しているからだ。
世界最大の感染国である米国は、原則として入国拒否の対象だ。にもかかわらず米軍基地を経由した入国は自由で日本の検疫が及ばない。
政府はこれらをどう考え、どう対策を取るのか、国会の場で示してほしい。