困窮高齢者の「最後の砦(とりで)」ともいわれる養護老人ホームで、なぜ定員割れが起きているのか。厳しい生活を強いられるお年寄りに、公的支援は届いているのか。

 経済的困窮や虐待を受けているなどの理由から行き場のない高齢者を受け入れる養護老人ホームの入所率が、沖縄は56・4%で全国最低だった。全国老人福祉施設協議会の調査によるもので、全国平均の89・9%を大きく下回った。

 かつて養老院と呼ばれていた福祉施設である。施設と利用者が契約する特別養護老人ホーム(特養)など介護保険施設とは異なり、市町村が「措置」という仕組みで入所を決める。入所にかかる費用には市町村の措置費が充てられる。

 県内には那覇市うるま市などに6施設あり合計定員は273人、うち入所者は154人にとどまり、空きが目立つ状況だ。

 65歳以上人口に対する入所者の割合を示す措置率も、全国の2・04パーミル(千分率)に対し、沖縄は0・49パーミルで最も低い結果となった。

 本紙が2014年に調査した際も、入所率は70%で全国最低だった。改善されるどころか、それからさらに空きが広がったことになる。

 高齢者人口が増え、高齢期の貧困が問題となる中、公的施設が有効活用されていないというのは、どうにもふに落ちない。

 養護老人ホームの定員割れは、地域のセーフティーネットの穴を広げることにつながりかねないからだ。

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 施設関係者が指摘するのは、措置に消極的な「措置控え」である。

 背景にあるのが自治体の財政難。小泉政権時の三位一体改革で税源移譲が進み、市町村が措置費を全額負担する仕組みがつくられた。国が4分の3を負担する生活保護の方が軽く済むという判断もあったとされる。

 しかし問題は、措置を必要としているにもかかわらず、生活保護となった高齢者が、どのような環境に置かれているかだ。

 低所得高齢者の受け皿となっている無届け老人ホームなどに流れて、不安定な状況に追い込まれるケースもあると聞く。

 生活に困窮した高齢者が自立した生活を送り、社会復帰ができるように支援する養護老人ホームの役割が軽視されているのではないか。

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 沖縄の場合、養護老人ホームが6市にしかないため、住み慣れた地域を離れ、遠くの施設に入所することへの抵抗感も定員割れの原因という。

 ただ全国と比べ入所率や措置率がここまで低い原因については、突きつめて考える必要がある。

 県人口に占める65歳以上の割合は既に21%を超え超高齢社会に突入している。次期振計期間中には、高齢者の貧困が大きな政策課題として浮かび上がると指摘されている。

 示された結果を重く受け止め、養護老人ホームがきちんと機能するよう、県も交えて改善策を話し合うべきだ。