2015年に亡くなった美術家、真喜志勉さんの展覧会が出身大学の多摩美術大学で開かれている。生前の作品から約100点を紹介。県外では初の回顧展となる

▼創作姿勢は独自。青い海や赤瓦の家など沖縄らしいイメージとは距離を置き、米軍基地のほかアメリカ文化の図像を組み合わせ、洗練されたセンスと風刺精神で作品化した

▼沖国大米軍ヘリ墜落事故後、焼け焦げた校舎の壁に触発され黒く塗り尽くされた絵画。辺野古新基地建設に伴うV字型滑走路をモチーフにした連作。沖縄社会の現状を反映した作品が目を引く

▼あらためて感じるのは戦後沖縄の美術が各時代の政治的、社会的な動きの中で創られてきたことだ。美術のほか詩や小説など文芸作品も歴史的文脈を抜きにして語ることができないものが多い

▼真喜志さんが亡くなった後も、米軍による事件事故が相次ぐなど、過重な基地負担は変わらない。最近では有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)の水源汚染や基地内での新型コロナウイルス感染に県民の不安が広がる。生きていたなら今の社会をどう表現するだろう

▼優れた造形作品は社会のありようを可視化し、私たちの立ち位置をとらえ返す力を持つ。米軍基地に揺れる沖縄の現状を広く知ってもらう上でも、真喜志作品が県外で紹介される意義は大きい。(与儀武秀)