社説

社説[Go To事業開始]「水際」対策機能させよ

2020年7月22日 07:09

 観光支援を目的とした政府の「Go To トラベル」キャンペーンがきょうから始まるのを前に、玉城デニー知事が記者会見し、「感染拡大防止と観光の両立を図る」との考えを示した。知事が発信したのは、水際対策を強化した上での「ウエルカム沖縄」のメッセージである。

 全国知事会では「近隣県から段階的に対象範囲を広げるべきだ」とする慎重意見も多かったが、海に囲まれた沖縄に「段階的」の選択肢はない。感染が再拡大する中での事業開始に拙速だとの声も強いが、にじむのはコロナ禍で苦境に立つ観光産業回復への切実な期待である。

 本格的な観光再開による新型コロナウイルス感染拡大への懸念に、どのように応えるのか。

 水際対策として県が示したのは、那覇空港での唾液を使った抗原検査の実施だ。

 ウイルス特有のタンパク質「抗原」の有無を調べる抗原検査は、簡単に短時間に済む。約1日かかったPCR検査と比べ、30~40分ほどで結果が判明するといい、きょうからスタートする。

 観光業界の期待も大きく、きちんと機能すれば水際対策として効果を発揮するだろう。

 ただ検査は発熱が確認された場合に、任意で受けてもらうものだ。

 現在、運用中の旅行者専用相談センター(TACO)でも、発熱が確認された人が問診を拒否した例がある。無症状の感染者の「見落とし」も否定できない。

■    ■

 キャンペーンは当初、8月上旬をめどに「感染拡大の収束後」にスタートする予定だった。

 感染が再び広がっている東京都が対象から外れることになったとはいえ、感染拡大地域は他にもあり、その線引きは曖昧だ。 

 仮にキャンペーンで感染が広がれば、観光回復どころかその勢いを鈍らせることにもなりかねない。

 観光は県経済の屋台骨であり、裾野の広い産業だ。コロナ後のカンフル剤も観光だといわれているだけに、感染状況を丁寧に分析しながら、地道に一歩ずつ進みたい。

 客と一定の距離を保つ、健康状態をチェックするなど業界ごとのガイドラインを徹底し、流行させない観光スタイルをどう確立していくか。今が踏ん張りどころである。

 ただ前のめりになりすぎず、観光地で感染が拡大した場合は、来県自粛も再検討すべきだろう。

■    ■

 スタートしたとはいえ、「Go To トラベル」を巡っての政府の迷走は目に余る。

 事業開始の前倒しに、東京の除外、そして前日に急きょ決まったキャンセル料の補償。見通しの甘さから生じた損害を公金で賄うのは、不良品の検品に巨額の税金を投じた「アベノマスク」の時とそっくりだ。

 二転三転する対応と定まらない運用基準に、旅行社をはじめ観光関連業界は疲弊し、混迷を深めている。

 混乱の責任は取らなければならない。

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