社説

社説[辺野古で9度目の裁判]地方自治の在り方問う

2020年7月23日 08:59

 名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の9度目の裁判となる。

 県は、埋め立て海域で見つかったサンゴ類の移植を巡り農林水産相が、沖縄防衛局の特別採捕を許可するよう是正指示したことを違法とし、福岡高裁那覇支部に提訴した。

 農水相の指示は、地方自治に関する不当な介入と言わざるを得ない。司法には、地方自治の在り方とともに、サンゴ保全など環境への影響も含めて、公正で踏み込んだ審理を求めたい。

 県の主張は大きく三つから成る。総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会は(1)地方自治法が求める「国の地方公共団体に対する関与は必要最小限にしなければならない」との基本原則から判断しておらず問題(2)環境監視等委員会の助言を重く見る偏った判断をし、是正指示を容認する結論を導いている(3)サンゴの移植計画が水産資源の保護培養の観点から問題がないか、慎重な審査が必要とするものだ。

 地方自治法は自治体の事務に関し、自主性や自立性に配慮しつつ、必要最小限で国が関与できると規定。閣僚による技術的な助言や勧告、指示を認めている。

 しかし、国と係争中の問題に関連する事務で自治体の判断を飛び越えて「許可するよう」指示することは、法の原則から逸脱する。玉城デニー知事は「知事の判断権限を奪うことになりかねず、地方自治の観点から大きな問題がある」と訴訟の目的を語った。

■    ■

 防衛局は、昨年計3万9590群体のサンゴの特別採捕許可を申請。県は審査を続けていたが、農相は今年2月、申請を許可するよう是正指示を出した。

 県は短期間での移植は極めて異例だとし、特別に慎重な判断が必要になると主張。これに対し、国は県がこれまでに許可した他の事例と比較して、平等な取り扱いがされていない、と反論してきた。 

 大浦湾海域は良好なサンゴ生息域であり、絶滅危惧種262種を含む5300種以上の生物が生息する、生物多様性が豊かな海である。

 訴状で、防衛局の環境監視等委員会の委員について「サンゴ類の移植にかかる科学的研究については専門外であり、科学的知見や技術的検討などに十分に指導助言し得る立場にない」と指摘した。

 サンゴの生存率が高まるよう国が最大限努力を尽くしてきたかも問われるべきだ。

■    ■

 大浦湾に広がる軟弱地盤の存在は、仲井真弘多元知事による埋め立て承認後に明らかになった。防衛局の設計変更承認申請は、今年4月になってからのことだ。国政与党からも膨らむ工期と工費への疑義が出ている。

 国が翁長雄志前知事を相手に起こした埋め立て承認の取り消し処分の撤回を求める代執行訴訟から数えて9度目の裁判。県の勝訴は1度もなく現在は8度目の「抗告訴訟」が継続中だ。

 県は民意に基づいて、国に対し計画の見直しを繰り返し求めてきた。地方自治とともに、民主主義が問われている裁判でもある。

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