2016年4月、うるま市で起きた米軍属の男による女性暴行殺人事件をきっかけに政府が発足させた「沖縄・地域安全パトロール隊」。16年6月の発足から20年2月まで米軍関係者のトラブル通報は8件で、逮捕に至った事例は1件もない。米兵らだけが対象でなく、青色灯をつけた地域「見守り」となっているのが実情だ。年間にかかる費用は8億5千万円、1日当たり230万円余。識者は「もっと有効な予算の使い道がある」と費用対効果を疑問視する。

パトロール出発の準備をする「沖縄・地域安全パトロール隊」=6月30日午後6時40分ごろ、那覇市おもろまち

 日没前の午後6時半、那覇市おもろまちの那覇第2地方合同庁舎駐車場で、年配の男性たちが青色回転灯をつけた100台ほどのレンタカーに次々と乗り込んだ。沖縄・地域安全パトロール隊の車両が青色灯を回転させて出発していく。

 1台を追うと、浦添市内の学校周辺などをゆっくりと巡回。2人1組の隊員は車内から辺りを見回し、約3時間後の午後10時近くになって出発地点に戻ってきた。任務終了後、声を掛けたが「うちからは何も言えない」と取り合わなかった。

 米軍絡みの事件を抑止しようと始まった警戒任務だが、現在は犯罪全体の抑止に名目が変化している。実際の中身は路上寝、少年の深夜徘徊(はいかい)、歩きスマホ、無灯火自転車などへの注意呼び掛けといった地域ボランティアのような活動がほとんど。それも基本的には車内からの「見守り」だ。

 沖縄総合事務局安心・安全対策推進官室によると、業務は同局と沖縄防衛局で巡回エリア別にそれぞれ発注し、任務には県警、消防、自衛隊OBと人材派遣、民間警備会社社員を充てている。午後7~同10時と同11時~翌午前5時の2交代制という。

 1日3~4時間勤務のシフト制で時給1229円。人件費やガソリン代、レンタカーの借り上げ代など年間費用は約8・5億円(18年度)に上る。1日当たりに換算すると230万円余り。16~18年度の3年間で約19億円が支出された。1日230万円余の税金を投入した治安警戒の費用対効果には疑問の声もある。

 県内の刑法犯認知件数は昨年6514件で本土復帰後最少を更新。ピークの02年(2万5千件余り)と比べて4分の1ほどに減っている。

 政府答弁によると、16年6月の発足から20年2月までに米軍関係者のトラブル通報が8件で、逮捕に至ったのはゼロ。総合事務局の担当者は「必ずしも米軍関係者にだけ目を光らせているのではない。数字だけを見て効果なしと判断されるのは残念」と話す。

 東京のある政府関係者は「業務内容は検証中」とした上で「例えばの話だが、タクシーに通報ネットワークシステムを導入するなどの代替案について検討の余地はある」としている。(社会部・比嘉大煕、城間陽介)

巨額の予算 設備投資に

 小宮信夫・立正大学教授(犯罪学)の話 率直に言って年間8億5千万円の予算があればもっと有効な使い道がある。例えばセンサーライト付き防犯カメラの増設や、犯罪が起きやすい人目に付かない駐車場、空き地周辺にフェンスを作るなどだ。パトロールは犯罪予防メニューの一つにすぎず、持続可能性を考えると、犯罪の起きにくい街づくりに予算を投じた方がいい。パトロールをするにしても犯罪が起きやすい場所に絞るべきだろう。