社説

社説[コロナ 祭りも直撃]伝統絶やさない工夫を

2020年7月28日 08:03

 新型コロナウイルスの影響で、長い歴史を持つ祭りや行事が相次いで中止に追い込まれている。

 「3密回避」のためやむを得ない面があるとはいえ、祭りのない夏はどこか寂しい。

 しかしこういう時だからこそ、伝統の継承や地域コミュニティーの核となっている祭りの大切さを再確認し、来年につなげる取り組みに力を入れてほしい。

 今年はゴールデンウイークににぎわうはずだった那覇ハーリーが中止になったのをはじめ、ユッカヌヒー(旧暦5月4日)の糸満ハーレーも取りやめとなり、勇壮な櫂(かい)さばきを見ることができなかった。

 予定されていた那覇、糸満、与那原の沖縄三大大綱引きも既に中止が決まっている。

 夏の風物詩だけではない。秋の豊年祭、十五夜祭りも早々と取りやめを発表したところが多い。

 いつもの年のように太鼓や三線の音が聞こえないが、旧盆のエイサーはどうなるのだろうか。

 地域における祭りは、ただ楽しむためのものではなく、神に五穀豊穣(ほうじょう)や健康を祈願し、感謝するものである。祭りに芸能はつきもので、先人たちがつくり、育んできた文化は、人々の精神的よりどころになってきた。 

 何百年と受け継がれ、住民のつながりを強めてきた祭りが開催されないことの影響は小さくない。

 土地の魅力を発信し観光需要を掘り起こしてきた祭りがなくなるのは、地域経済にとっても大きな打撃である。 

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 サバニによる競漕(きょうそう)は取りやめとなった糸満ハーレーだが、ハーレー鉦(かね)を鳴らす伝統行事や儀式は代表らによって実施された。コミュニティーラジオ局「FMたまん」は、「雰囲気だけでも味わってもらいたい」と前年のハーレーの模様を再放送で伝えた。

 中止が決まった祭りの中には、住民で神事だけを執り行うケースもあるという。感染防止対策をとりながら、伝統を絶やすことがないようにとの次善の策だ。

 新型コロナの収束は見通せず、難しい状況にある。ただ祭りがないからこそ、伝統行事の発信を強め、担い手が失われないようにすることが重要だ。

 地域のお年寄りから話を聞いたり、歴史や由来を学んだりといった意識的な取り組みを求めたい。行事のネット配信といった試みにチャレンジしてもいいのではないか。

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 夏祭りの花火大会の中止が相次ぐ中、先月1日、花火業者の有志が全国各地で一斉に花火を打ち上げた。希望の「大輪」で闇を照らし、コロナ禍を乗り越えようとメッセージを送ったのだ。苦境に立つ業界にもかかわらず「上を向いて明るい気持ちになってほしかった」との言葉が心に響いた。

 祭りなどの中止によって関連する産業は大きな打撃を受けている。

 地域の伝統を守っていくためにも、国や自治体には文化に関わる産業を支援する体制をつくってもらいたい。

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