玉城デニー知事の基本合意書の調印で、北部基幹病院の整備計画が大きく前進した。人口10万人の医療圏に同規模の急性期病院が二つあり、医師不足など不安定な医療体制の北部地域。入院患者の2割超が中南部で治療を受けざるを得ない事態も長年続き、2病院の統合は待ったなしだった。だが採算が取れるかなどの懸念も根強く、県などは8月に立ち上げる新協議会で具体的な議論を進める考えだ。

北部基幹病院の基本的枠組み

 公立病院と民間病院の統合は全国的にまれで、2病院がそれぞれ雇う500人規模の職員の取り扱いなどを巡り交渉が難航した。2年半にわたる協議でやっと見いだした関係者の着地点が、県だけでなく市町村も運営に携わる「公設民営」による統合。北部市町村長の一人から「正直ベストと言えないがベターな唯一の案」との声も聞こえた。

 それだけに、県政与党の一部県議らから「統合すれば全てバラ色、ではない」とくぎを刺す声も相次いだ。早期合意を求める北部側と板挟みになる形で、玉城デニー知事は調印の判断を約半年、保留していた。

 例えば、県の収支予測は開院後10年間、毎年度に約10億円の黒字を想定。入院単価を6万円、病床稼働率96~98%とほぼ満床の状態を前提に試算する。だが実際、現在の2病院の単価は約5万円。開院後の450床のうち1割の48床が急性期より単価が低い回復期病床になる見込みで「6万円は非現実的だ。人口減と高齢化が進む北部での達成は非常に難しい」(元県立病院関係者)との声も。

 県立間の人事異動ができなくなることで、医師や看護師の確保が難しくなるとの指摘もある。知事は28日の調印後、記者から「(採算面などの)課題は解決したということか」と問われ「ほぼ」との表現にとどめた。県幹部は「基本合意書は最低限の枠組み。懸念事項などの細部を詰めるのは、これからが本番だ」と腕をまくった。