本島北部の医療体制の在り方を巡る6年越しの議論が大きな節目を迎えた。県立北部病院と北部地区医師会病院の統合に向け、玉城デニー知事や北部12市町村長らが28日、「北部基幹病院」の基本的枠組みに関する合意書に調印した。新病院の経営形態を「県立」ではなく「公設民営」とする現行案で、県、地元市町村、医師会の足並みがようやくそろった。

 基幹病院の名称は「公立北部医療センター」。450床規模で、2024年度に着工し、26年度の開院を目指す。8月に整備協議会を発足させ、病院運営に関する基本構想をまとめる方針。議論を加速し、実現に向けて着実な前進を図ってほしい。

 人口約10万人の北部医療圏に同規模の二つの病院が近接し、非効率で不安定な医療体制が長年続いてきた。県立北部病院の医師不足を発端に、診療休止や診療制限など医療危機が叫ばれるようになって10年以上がたつ。生きていく上で、医療は不可欠な生活基盤の一つ。なぜ、ここまで時間を要したのか。

 北部12市町村の住民らは17年、総決起大会を開き、11万筆余りの署名を県に提出した。医療格差の是正は、住民総意の「悲願」だった。

 関係者の認識の一致は歓迎すべきだが、一日も早い医療体制の整備を必要とする患者側からすれば、遅すぎた合意とも言える。

 今回は、基幹病院の基本的枠組みに関するコンセンサスであり、計画実現のための一里塚にすぎない。関係者がクリアすべき課題はなお残る。

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 一つは、「県立」ではなく、県や北部12市町村がつくる一般財団法人「北部医療財団」が運営する新病院で、救急医療や小児・産婦人科といった不採算部門が切り捨てられないかという懸念だ。

 基本合意書では、切り捨てない「担保」として、運営費用の不足分は県が負担すると明記。診療科目も、統合前の現2病院の科目を基本とし、歯止めをかけた。

 収支予測は開院後10年間、毎年度10億円の黒字を想定。ただ、根拠となる病床稼働率などの試算が甘いという指摘もある。

 職員の待遇も懸念材料の一つ。県立から新病院へ移る場合、現在の医師会病院の労働条件が適用され、給与水準が下がる。開院後3年間は県から職員が派遣され、必要に応じて期間延長されるが、県立病院間の人事異動がなくなることもあり、持続的な人材確保に不安が残る。

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 北部地域は離島も含め、広い生活圏を持つ。県内外の観光客が集まる観光施設を多く抱えるなど、医療が担うべき役割は大きい。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、医療現場は逼迫(ひっぱく)。感染防止を図り、地域の人々の命を守る最後の砦(とりで)として、安定的で重層的な医療拠点を整備する重要性は増していると言えよう。

 長年の関係者による努力の着地点として到達した基本合意を新たな出発点として、6年後の開院まで課題を乗り越え、医療格差の解消を急いでほしい。