東大、京大、東北大など1人で計五つの大学入試を突破した“合格王”が、県内の塾で沖縄の子どもたちの学力向上に取り組んでいる。那覇市内の塾で働く安本肇さん(73)。得意の数学では、問題を独自の「安本式」で解く参考書を大手予備校の名義で出版したこともある。「20年前に移住した沖縄に少しでも恩返しをしたい」と、受験生の指導を続けている。

東大など5大学に合格した経験を持つ塾講師の安本肇さん=28日、沖縄タイムス

安本さんの東大や広島大時代の学生証。京大は合格したが、入学していない

東大など5大学に合格した経験を持つ塾講師の安本肇さん=28日、沖縄タイムス 安本さんの東大や広島大時代の学生証。京大は合格したが、入学していない

 広島県出身の安本さんは高校卒業後に広島大学数学科に入学したが、理工学部へのあこがれから大学を中退。3浪の末に名古屋大学計測工学科に合格し、卒業後は東京のコンピューター関連の商社に入社した。

 しかし、配属先の営業は肌に合わずに退職。塾の経営を始め50人ほどの受験生を指導するうちに、ある思いが湧いてきた。

 「生徒を難関大学に合格させるには、自分が経験してみなければ」

 31歳で受験したのは、東京大学の理科一類。自ら合格することで、生徒を指導する中で確立した勉強法の有効性を証明してみせた。

 東大入学後は教育学部に課程を変更して卒業。その後、京大と東北大も受験し合格したが、実際に入学はしなかった。

 その後、大手予備校の東進ハイスクールで講師を務めた。数学を数式で解くのではなく、図で捉えて計算を簡略化する独自の「安本式」を紹介する参考書を出版した。

 知り合いに誘われて沖縄に移住したのは20年前。浦添市内で自ら塾を構えていたこともあったが、今は那覇市内の予備校で個別指導に当たっている。

 安本式は沖縄の子どもたちにも受け入れられた。教え子の1人は高校の成績が学年で下位だったが、3年間の指導で九州工業大に合格した。「学校の授業についていけなかった子が『数学は楽しい』と話すようになり、私も1日7時間も教えた」と当時を振り返る。

 移住して長い時間が経過し70歳を超えた今、沖縄のため、より多くの子どもたちを助けたいとの思いは日に日に強まる。

 半世紀近くを塾講師として過ごした経験から「塾もいいが、教育現場である学校で自分の勉強法を少しでも活用してもらいたい」と語る安本さんは、学校と連携ができないかを模索している。(社会部・銘苅一哲)