[新生オリオンの挑戦 変革の1年](上)

2020年度から22年度までの中期経営計画を発表するオリオンビールの早瀬京鋳社長(中央)=3月27日、那覇市のJR九州ホテル ブラッサム那覇

 「本土ビールメーカーに比べ、規模はベンチャー。追い掛けるというより、全く新しい提案で県民を驚かせたい」。3月に開かれたオリオンビールの中期経営計画の発表会見。早瀬京鋳(けいじゅ)社長は県内ビール市場のシェア拡大へ意気込んだ。

 オリオンは大手メーカーの攻勢で、ビール類の県内シェアはこの6年間減少が続き、2019年は44%。会見では22年に55%まで取り戻す目標を掲げた。早瀬社長は昨年7月に就任後、外資系企業を渡り歩いてきた県外出身者の視点で立て直しに着手。ゴディバチョコレートやダイソンなどで商品開発してきたマーケティング専門の吹田龍平太専務を中心に、千人以上の県民の嗜好(しこう)やニーズを調査した。

■看板のドラフトが「おいしいと思われてない」

 結果は衝撃的だった。吹田専務は「ドラフトがおいしいと思われていない。他社のビールに支持率で差を空けられていた」と明かす。

 オリオンは居酒屋では飲まれているが、スーパーでの購入率が低い現状も浮き彫りになった。創業者の故・具志堅宗精氏の時代から培われてきた店舗営業で飲食店での取扱量が圧倒的に高く、観光客にも飲まれている。一方で、県民が自宅で飲もうと買うのは他社のビールという傾向が表れていた。

 調査では、県民が何を求めているかも明らかとなった。原料や製法にこだわっているプレミアムや、味や香りの個性が際立っているクラフトビール。早瀬社長は18年に名護市内で限定発売された75ビールに着目。味を改良してプレミアムクラフトビールとして復活させ、昨年12月、県内全域で一斉発売した。

■見い出した「プレミアムクラフト」という新市場

 新製品の発売は新生活が始まり、暖かくなる3~4月と、ビールを飲む機会が増える夏の8~9月が慣例。通常ない発売時期と消費者の低価格志向に挑戦する高値設定に、社員の反発も受けた。「県民が望んでいるのなら出すべきだとかなり強引に進めた」(早瀬社長)が、発売4カ月余りで目標を約6千万円上回る1億8900万円を売り上げた。早瀬社長は「プレミアムクラフトという新しい市場は我々の予想以上だった」と手応えを振り返る。

 マーケティングを基に、商品構成も見直した。大手メーカーへの対抗で発売するも販売が伸び悩んでいた発泡酒や新ジャンルの生産を中止。基幹ブランドのドラフトと、新ジャンルで売れ筋のサザンスターは味を見直し、県民の支持が高い75ビールと、女性に人気のチューハイ「ワッタ」を加えた4商品に生産を傾けることを決めた。

 県内シェア拡大へと反転攻勢の足掛かりができ、早瀬社長は自信を見せる。「これまでは『オリオンだから買ってくれる』と競争環境を甘く見ていた。今の我々は県民ニーズを的確に捉えている」

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 オリオンビールが外資系の投資会社に買収され、新経営陣を迎えて1年が過ぎた。「第2の創業」に位置付けられ、経営改革が進むオリオンの何が変わったのか報告する。